交響曲第8番ハ短調
カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
54/03/10
haenssler CLASSIC CD 93.148

 NDR盤(55年10月)と近い時期の演奏であり、同じくトータル79分台の堂々とした演奏になっている。 そちらのページの追記には当盤を欠落部分のパッチに使用したと書いているが、実はそれも購入動機の一つであった。「シュトゥットガルト放送響 vs 北ドイツ放送響」だと何だかチェリとヴァントの代理戦争みたいだが、本ページはそれでいくことにした。(使用楽譜にせよテンポ設定にせよ精度にせよ、VPO盤は私にはかなりズサンと感じられ、それらよりはるかに聴き劣りする。)
 当盤には終楽章で金管のトチリが何度か聴かれるのに対し、NDR盤では縦の線がずれるところもあるので、演奏の完成度を比較すれば勝負はほぼ互角である。一方音質だが、7番SDR盤ページでも触れたようにヘンスラーはステレオ効果を付加しているようである。(当盤の方がハッキリと判る。)フルトヴェングラーのベートーヴェン等では奥行き感のある「ブライトクランク」盤の方が断然好きだが、当盤では擬似ステによって音に拡がりこそ感じられるものの、少々腰が軽い演奏という印象を受けてしまうのが痛し痒しである。(7番は軽快さがプラスに作用するので事情が全く違う。)NDR盤のようにテンポに釣り合うだけの重々しさが出ている純正モノラルの方がやはり好ましいのではないかと思った。また、ソフトフォーカスだけに音がやや遠く感じられ、生々しさも後退しているような気もした。(が、所詮は「好きずき」から一歩も出ていないだろう。)
 前半2楽章の印象はNDR盤と大して変わらない。テンポ変更を多用するいつものスタイルながら、あくまで節度を失わないという立派な演奏である。(なお、今回のヘッドフォンによる比較試聴により、NDR盤の第1楽章1分50秒〜2分07秒にて左チャンネルの音がほとんど入っていないことに気が付いた。他にもあるかもしれない。)第3楽章は前段落で触れた音の軽さのためか、音楽の流れが滑らかでNDR盤とはかなり印象が異なっている。と思ったら、実際にもトラックタイムは1分以上短くなっていた。が、「屈指の出来」としたNDR盤とも甲乙付けがたいほど充実した演奏である。終楽章は逆に当盤の方が2分ほど長くなっており、終始余裕のようなものが感じられる。ここでは軽い音色が幸いし、遅いテンポでも決してもたれない。冒頭から凄まじい勢いで少々前のめりにも感じられるほどだったNDR盤とは、ここでも優劣が付けられない。
 ということで、両盤のいずれを採るかについても結局は好き嫌いの問題に帰着してしまうような気がする。そして、どっちでもいいからステレオで残っていればなあ、とつくづく残念に思ったのであった。

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