交響曲第7番ホ長調
カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
53/03/06
haenssler CLASSIC CD 93.147

 トータル60分04秒で64年スタジオ盤(60分06秒)とほとんど変わらない。両盤のトラックタイムも両端楽章はほぼ同一である。アダージョが若干長く、スケルツォが速くなっており、楽章間のメリハリは当盤の方が利いていると言えなくもないが、8番(未聴だが4番もそうらしい)の50年代と60年代の録音間に聴かれた「二重人格者」のような極端な違いではない。
 何といってもオケがシュトゥットガルト放送響だけに技量がしっかりしており、最初から最後まで安心して聴ける。第1楽章1分14秒からフルオーケストラで主題を奏でるところをネットリとやっているが、精度は64年盤より明らかに上である。この時点で響きの美しさに魅了されてしまった。6分09秒でもハーグ盤のように吹き出すようなことはなく、指揮者がここで手綱を引き締めたということもちゃんと解る。それにしてもシューリヒトの7番演奏は実に不思議だ。ブロック間はもちろん、ブロック内でも時にアッチェレランド、リタルダンドを交えて、下手をすれば曲が壊れてしまいかねないほど派手なテンポいじりをやっている。それがギリギリで踏みとどまれているのは、やはり指揮者に絶妙なる平衡感覚が備わっているからとしか考えられない。アダージョも同じスタイルであるが、テンポを落とすところで指揮者のこだわりが聞かれる。何でもないような部分で丹念に演奏させているのだ。まさに「部分こだわり派」(許光俊)の面目躍如であるが、彼がそれをやっても気に障らないのがやっぱり不思議だ。前半2楽章は目まぐるしく変わる風景のようで、それぞれ20分、19分が短く感じてしまうほど内容は濃い。なお、当盤ではクライマックスはティンパニだけであるが、それでも強烈な爆発である。この快速テンポなら、それもなしで良かったのではという気もする。後半2楽章は64年盤以上に見事だ。激しい演奏だが、合奏が揃っているので荒っぽく聴こえない。終楽章は12楽章以上に目まぐるしいが、10分ちょうどでは前の部分が終わらない内に次に入ってしまう。これもライヴゆえであろうか? 「リズムがだらしない」として叩きたいほどのフライングなのだが、これだけノリが良いと「ま、いいか」になってしまう。
 モノラルのライヴだが、某かの効果が加えられているらしく音に深さがある。録音は良好で会場ノイズもそんなに多くない。ステレオでも音質に不満の多い64年スタジオ盤より聴きやすいように思う。(ハーグ盤は124楽章の終わりで音が割れ気味になっており、それが妙な迫力を演出していたが、それは演奏自体に由来するものではない。)よって、総合的(演奏&録音)にも当盤の方が上回る。某掲示板でもこちらに軍配を挙げる意見が複数見られたが、それも当然であろう。64年盤が「噛めば噛むほど味が出るスルメ」なら、イキのいい当盤は「口に入れた途端に旨味が広がる烏賊刺し」といったところか。併録の「トリスタンとイゾルデ」からの管弦楽曲(2曲)も素晴らしい。私はクナの演奏より気に入った。

7番のページ   シューリヒトのページ