交響曲第5番変ロ長調
カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
62/10/18
ARKADIA CDGI 742.1

 浅岡弘和が非常に高く評価していたDG盤(VPO150周年記念として発売)は既に廃盤で、ネットオークションでもかなり高騰していた、そこで代わりに入手したのが当盤である。無競争で落札できたので高くなかった。モノラルでヒスノイズはあるが、音はそんなに悪くない。4番と同じくSDRは非常に精緻な演奏を行っている。
 第1楽章の序奏はゆったりだが1分45秒から別テンポになり、加速しながら2分04秒のフォルティッシモに突入する。3分23秒からの巨大さは4番終楽章のラストに匹敵する。圧倒された。18分52秒以降もまるでチェリビダッケ&MPOのような足取り。このまま行ったら凄いことになるぞ、と思い始めたところでコーダ(2分04秒〜)に入ると早足になって終わった。このようにテンポはコロコロ変わるけれども、節度があって荒れ狂ってはいない。5番では許容範囲だ。第2楽章も味わい深い名演。ここでも冒頭はゆったり。全休止後2分32秒からハ長調の第2主題が始まるところは胸が熱くなった。(浅岡はVPOとのDG盤についてではあるが、「第2主題が変奏され盛り上がった55〜69小節は神と一体化したかのような法悦がすばらしい」と書いていた。名言である。)それを引きずらないのがこの人の持ち味なのか、その後はサラッと流すのだが、それがまた心地よい。メリハリの付け方が見事だと思った。第3楽章は何と10分を切っている。原典版使用でこういうケースを私は他に知らない。7番と同じく、スケルツォ主部の終わりは嵐のようであるが、これも見事だ。第4楽章は一転してゆったり。4番のページでは「全体のバランスが悪い」などど書いたが、撤回しなければならないかもしれない。この人は全体の統一間ではなく、楽章間のコントラストを重視するタイプなのだ。そう思って聴くと、この楽章にも何ら不満はない。27分弱というこれまたチェリ顔負けのスローテンポであるが、4番と同様ここでも巨大スケールのエンディングを用意したのである。突然せわしなく走り出したりすることは皆無である。コーダの見事な鳴りっぷりは特筆もので、最後の1音まで隙がない。これがステレオだったらベストスリーには入っていたな。
 先月(2004年9月)までの作成分で、モノラル録音のディスク評といえばカラヤンの5番VSO盤とマタチッチの4番だけだった。これほど多くのモノラル盤を聴くのはシューリヒトが初めてであることに今更ながら気が付いたのだが、やはりステレオと比べたら圧倒的に情報量が少ないため執筆には結構骨が折れる。(響きとかパートバランス、あるいは楽器の絡みがどうのこうのとグダグダ書くことは不可能である。)来月取りかかる予定のクナとフルヴェンのページ作成が今から思いやられる。

5番のページ   シューリヒトのページ