交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
カール・シューリヒト指揮スイス・ロマンド管弦楽団
61/12/06
Chaconne CHCD-1004

 目次ページの追記2に書いたごとく、つい魔が差して当盤を買ってしまった。音が悪いのはある程度覚悟していたが、想像以上にヒスノイズが凄く、欠落箇所も多い。何も知らずに聴いていたら「論外盤」となっていた可能性大である。なので鑑賞には全く向いていないが、SDR盤ページの後半に書いたように、そちらとは別人28号のような演奏なので興味を持って聴くことはできた。つまり資料価値はある。
 第1楽章は何かに憑かれたように荒れ狂っており、同じく改訂版によるマタチッチ、クナ、フルヴェンの演奏がおとなしく思えるほどだ。(版の枠を越えても、ここまで激しい演奏というのはあんまり思い付かない。最後の「グァン」のド迫力はカラヤンも顔負けである。)また、彼らは第2楽章だけは改変部分をうまく生かして、深い森のような響きでシミジミとした味わいを醸し出していたのだが、シューリヒトはそんなことお構いなしとばかりスタスタと走り去ってしまう。後半楽章もテンションが落ちることはなく、結局お終いまでハチャメチャ演奏である。これでは本当にシューリヒトが振っているのか疑いたくなるのも無理はないという気がするし、もしそうだとしても、少なくともSDR盤(55年)よりは早い時期の演奏であると考える方がフツーなのかもしれない。しかし、このわずか2週間ほど前(11/20〜22)には、あの言語道断というべきVPOとの9番スタジオ録音が行われていたのだ。この頃のシューリヒトは、孫が家を飛び出すなど何か家庭内に面白くないことでも抱えていたので鬱憤ばらしがしたかったのだろうか、いやグレていたのは指揮者自身に他ならない、などといらんことを考えたくなるほどの暴走ぶりである。「不良老人による大爆演」というキャッチコピーを付けたらいくら何でも怒られるだろうが、80歳を過ぎてもこんな熱いブルックナー演奏を繰り広げた超人(怪人?)指揮者は他にヨッフムぐらいではないだろうか? 癇癪持ちの老人みたいなスタイルということで、ふとトスカニーニを思い出した。彼の演奏だといって聴かされたら信じてしまうかもしれない。デッド気味で古めかしい録音も30年代みたいだし。

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