交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
トーマス・シュメーグナー(オルガン)
94/04/06〜07
KING International (Edition Lade) KKCC-4196 (ELCD 009)

 「クラシックの聴き方が変わる本」では「トーマス・シュメークナー」である。こっちの方が近いような気もするが、日本語解説の表記に従って「トーマス・シュメーグナー」とする。(既に "Roegner" を「レーグナー」としてしまっているから、そちらとの整合性を保つということもある。)ところで同著では片山杜秀が「原曲も驚く『編曲もの』の愉しみ方」という項で採り上げ、編曲者兼当盤奏者の試みについて「何とはまってしまったことか!」「まるでこの曲が最初からオルガン曲であったかのように鳴る」と褒め称えていた。それが頭にあったからこそ、8番レッグ盤にそこそこ満足しており、オルガン版ディスクはそれで打ち止めにする予定だったにもかかわらず、「廃盤CDディスカウントフェア」に出品されていた当盤をついでに買ってしまったのである。(確か2003年だったと記憶しているが、この年は大豊作でTahra原盤によるクナやフルヴェンのKING国内盤を一挙に入手することができた。)なので定価の三掛け=840円だったはずだ。レッグ盤のような面白さは感じなかったものの、確かに当盤の出来は悪くなく、そこそこ満足できた。ただし、同著の「ロマン派の音楽は屈折の歴史である」にて当盤を裏盤として挙げていた脇田マサオの「次にはぜひ5番をやってほしい」という結びには賛同できない。ネット上でも同意見を何度か目にしているが私の見解は異なる。既発売の8番や未聴ながら3番などは良いと思うが、5番の両端楽章ラストのような豪華絢爛たる部分では、いくら趣向を凝らしたとしても物足りなさを憶えずにはいられないという予感がある。8番ラストがまさにそうだった。なので出ても多分手は出さない。(ついでながら、片山の「これからブルックナーの交響曲は、オケでやるのをやめ、全部オルガンにしちゃったほうがいいかもしれない」も却下。)なお、私が以前テレビで観た7番はもっとも編曲に向いているとは思うが、ネット上のどこかで「アダージョが速すぎ」というコメントを見て買う気がなくなった。確かに15分台(まさかカットはしてないだろう)というウルトラ尻軽テンポによる演奏を聴いたら立腹せずにはいられまい。(ついでながらトータルタイムは何とあのオーマンディ盤よりも短い。)某掲示板にも「シュテンダーの7番は駄演。こいつマジでヘタクソ。」「んだね。あと残響で何が何だかワケワカメな箇所が多すぎ。」といった酷評が書き込まれていた。
 閑話休題。当盤のトータルタイムは68分台であるし、全4楽章のトラックタイムを通常の管弦楽による演奏と比べても特に異常は発見されなかった。実際に聴いてみてもテンポに違和感は全くない。またロッグ盤のような淀みはなく、「ブルックナー休止」が確認されただけである。つまり、オーケストレーションの忠実な再現にこだわったロッグに対し、シュメーグナーはあくまで音楽の流れを重視して編曲に臨んだといえるだろう。当盤はその点では文句なしだが、上記片山の「はまってしまった」には納得できない部分がある。4番の豪華絢爛さは伝わってくるものの、時に響きが混濁しているように聞こえるのが惜しい。第1楽章中間部のコラールなど、いくら何でもモッサリしすぎである。もっと味わい深いはずの第2楽章も無難に流しているという印象だ。おそらく方針の違いにより編曲作業の自由度はロッグよりもずっと高かったと想像するが、その割には変化に乏しいように聞こえてしまう。後半楽章もサービス満点ではあるものの、いかにも一本調子と言いたくなるような盛り上げに物足りなさを覚えてしまった。もしかすると、当盤はブルックナーとは縁もゆかりもない作曲家のオルガン作品として耳を傾けるべきかもしれない、と暴論を吐いて終わる。

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