交響曲第5番変ロ長調
ウォルフガング・サヴァリッシュ 指揮バイエルン国立管弦楽団
90/09/28〜29, 91/03/20
0RFEO C 241 911 A

 第1楽章冒頭からいきなり驚かされた。風格が滲み出ており、神経質なところは微塵も感じられなかったからである。6番の9年後の録音であるが、その間に余程の円熟味を加えたのだろう。以前のサヴァリッシュなら間違いなくコーダ前でセカセカと加速していたはずだ。同様の例が他にもあったと考えてみれば、ヴァントがまさにそうだった。いや、堅苦しさがない分だけ全体的な印象としては当盤がヴァント&BPO盤を凌駕しているとすら思った。中間部やコーダなど要所要所の盛り上がりに特に感心した。凄まじいほどの迫力を前面に出しながらも合奏が全く乱れないところが素晴らしい。サヴァリッシュもせめて80代後半まで現役続行していれば「ドイツ最後の巨匠」(←実際には決して打ち止めにならないけれども)として持てはやされていたに違いない。そう考えると実に惜しい。
 第2楽章は3分19秒以降など時にスタスタになってしまうのがマイナス。第1楽章に続くものとしてはドライ過ぎると私には感じられる。(ちなみに、他ページでも引いているファンサイトでは、「サヴァリッシュのブルックナーが《神秘性》に欠けているという非難」に対する指揮者自身の反論を紹介しているが、この点でもヴァントの考え方と共通するところがあるように思った。ついでながら既にドホナーニの5番ページに記したが、ブルックナー演奏に何かといえば「カトリシズム」を持ち出してくるという風潮には私も大いに疑問を抱いている。)第3楽章は優に合格点を突破している。
 そして終楽章であるが、全曲中でも極めつけの出来映えである。トラックタイム25分台はチェリ&MPOコンビの録音中で最も優れた85年盤と肩を並べるほどの堂々たる歩み、そして艶のある音色こそ一歩を譲るしれないが、響きの充実度やここ一番(16分少し前など)での凄味では上回っているという印象である。(超優秀録音の貢献も大だろうが。)「後塵を拝する」などとんでもない。HMV通販のユーザーレビューには「第4楽章前半までは本当に素晴らしい充実した演奏。サヴァリッシュらしい才気走ったところがなく、大名演と思っていました。しかし、第4楽章後半なぜか崩れ、サッサカと終わってしまうのです。あーもったいない!」とあったから、あるいは途中で失速してしまうのかな、と危惧していたけれども実際にはそのようなことは全く起こらなかった。確かにコーダに入って粘ったりしないものの、基本テンポを忠実に守りつつ壮麗なエンディングを実現しているのだから文句の付けようがないと私は思う。

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