交響曲第7番ホ長調
クルト・ザンデルリンク指揮バイエルン放送交響楽団
99/10
En Larmes ELS 02-288

 2ヶ月後のシュトゥットガルト放送響盤よりトータルタイムが2分ほど短くなっているが、それは専ら前半2つの楽章のトラックタイム差による(第1楽章が約1分20秒、第2楽章が約40秒)。その分だけ動的という印象を受ける。例えば第1楽章4分11秒以降しばらく淡々と進み、45秒からはシンミリ口調、そして5分過ぎからは加速する。途中からアンサンブルがずれているように聞こえるが、そんなことはお構いなしに盛り上げる。ここでもヴァントやチェリのようにオケを締め付けて緻密な合奏を聞かせようとはしていない。その代わりに表現が大胆になりスケール感は抜群だ。その点では演奏時間の長いSDR盤よりも上回っている。必ずしも「テンポが遅い」イコール「スケールが巨大」ではないことを示す好例である。(両者にある程度は正の相関があるとは思うけれども、せいぜいr=0.7 位のような気がする。それを単に遅くすればよいと錯覚している指揮者が一部にいるのは困ったものだ。)6分29秒〜の「パーパカパッパカパッパカパー・・・・」がSDR番同様に控え目であるが、この実力指揮者が「イケイケ」「大根役者」にならないのは当然である。この時点で楽章終盤に狙いを定めていると推察できるが、案の定コーダの表現も極めて劇的である。入る直前に減速してゆったりと進め、ホ長調に戻ってから次第に加速する。もちろん絶妙なテンポ設定(朝比奈やジュリーニのような主部のテンポを無視したノロノロ、スタスタにはしない)のお陰で圧倒的スケールを実現している。
 ということで、当盤も4番94年盤と同じく「ザンデルリンクの大柄な音楽作り」を楽しむにはピッタリといえる。その一方で、あるサイトの「のっぺりした演奏」というSDR盤評にも十分納得することができた。あるいはSDRよりもBRSOには客演の機会が多く、メンバーとは気心が知れていたため思い切った演奏が可能だったということだろうか?
 ところが、これで終わる訳にはいかない。今更のように気が付いたのであるが、どちらかといえば明るい音色による明快な響きを持ち味とするBRSOにもかかわらず、4番ページにも書いたようにザンデルリンクが振った場合にはBPOのような重厚さを感じるのである。(ただし、これも繰り返しだがあんなに息苦しくはない。)実に不思議なことである。指揮者の体重が響きに反映したりするのだろうか?(まさか。)それはともかく、この重さが7番のアダージョでは落とし穴である。すなわち、打楽器のないクライマックスでは物足りなさを感じてしまうのである。SDR以上にダイナミックな演奏という点からも、やはりあそこには「ジャーン」が欲しい。(せめてティンパニだけでも。)これに対してSDR盤の「のっぺりした」(私としては「端正」あるいは「禁欲的」という言葉を与えたい)スタイルはまさに「ハース版的」である。これは全曲を通しても同様である。結局は好みの問題に過ぎないのだが、よって当盤の順位は4番94年盤と同じとさせてもらう。(実は理由も同じだったりする。)

7番のページ   ザンデルリンクのページ