交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
クルト・ザンデルリンク指揮バイエルン放送交響楽団
85/10/10
The Bells of Saint Florian AB-9

 どうにも困ったディスクである。トータルタイム58分ちょっとで平均よりちょっと長いかなという程度。極端に遅いという楽章もない。つまり私が所有する他の2種録音とはかなり毛色が異なっており、ケース裏に表記されている指揮者で本当に合っているのだろうかという疑問を抱かずにはいられない。(4番ページに書いたが、嘘っぱちが最近発覚したばかりでもあり、「鐘」レーベルのデータはどうも信用できない。別に販売側が騙っていた訳ではなく、周囲が勝手に「80年代の演奏」と決め付けていたに過ぎないのだが・・・・)63年盤ページに書いた第1楽章の「ドーシーラソ#、ラーソーファミレ」が当盤では相当に力が入っているし、2分37秒頃から加速するのも他盤では聞かれない。また中間部ピークの少し手前での急ブレーキもやってないし、ピーク自体もその後も勢いはそこそこ感じられるのであるが、スケール不足の感が拭えない。つまりザンデルリンクの持ち味が発揮されていないということであり、やはり別の誰かが振っているのではないかと考えたくもなる。ライヴ録音ゆえ勢いや流れを優先したというのもちょっと違うような気がする。01年盤もそうなのだから。強いて挙げるとすれば3種中で唯一西側のオケを振ったということだろうか。東独ではずっと抑圧されていたため、たまに外に出た時ぐらいノビノビ演奏したいと考えたたのだろうか? あるいは西の連中にええカッコを見せたいという気持ちを持っていたとか?(もしかして、それすらも当局の命令だったりして。)
 などとゴチャゴチャ書いたけれども、指揮者が誰にせよ(ザンデルリンクのイメージからすると少々腰が感じられるものの)、なかなかに優れた演奏であることは間違いない。ただし、FM放送のエアチェックのようでヒスノイズが結構耳に付くし音質は平板、分離もイマイチであるからお世辞にも優秀録音とはいいがたい。バイエルン放送響によるブル3はとかく名盤揃いであるから、それらに混じってしまうと残念ながらかなり聴き劣りがする。このオケ特有の鋭さがすっかり陰を潜めてしまっているのが致命的である。(そもそも本当にBRSOの演奏であるかも定かではないのだが。)

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