交響曲第6番イ長調
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省交響楽団
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BMG (MELODIYA) BVCX-38011〜2

 当盤にはちょっと期待していた。ショルティ盤によって並の演奏では満足できない体質にさせられてしまった私だけに、「この人のことだから何かやってくれるだろう」とワクワクしながら聴き始めたのだが・・・・・結論を書いてしまうと、やっぱり物足りなかったということである。ブルックナー版の「リズムの神化」というべきこの曲にしてはティンパニがおとなしすぎると聞こえる。私はどうしても強烈な打撃が欲しい。(もはや完全に中毒者である。)
 とはいえ、決してつまらない演奏ではない。第1楽章序奏部での合いの手からして既に独特であるが、この演奏では木管ソロが実に効果的である。フルートでもオーボエでもクラリネットでも、とにかくその甘い音色に魅了される。これは曲との相性だろう。他の曲では不自然と感じられたパートバランスが地味なこの曲では見事にはまっているのだ。残響のお陰か弦も艶のある音と聞こえる。そういえば、この楽章後半で活躍する金管は、いつもの突き刺さるような鋭い音ではない。指揮者が違う楽器を使わせたのか、それともエンジニアが調整したのか? どちらにせよ、滑稽ブラスが美しさを台無しにしないよう考慮されていることは好感が持てた。第2楽章も幻想的で美しい。第3楽章では嬉しいサプライズがあった。最初の盛り上がりではティンパニが「タンタカタ」とちゃんと打ち込みを入れているからである。ここまで封印していたのだろうか? ちょっと他では聴かれない軽めの打撃音だが、新鮮な印象を受けた。終楽章は冒頭のラッパによる合いの手が耳に付くことから予想していた通り、盛り上がりでもブラスが派手に吹きまくっている。ただし、例によって角の取れた音である。この楽章ではテンポのメリハリが顕著で、遅い部分を相当ネットリやっているが、そこでの弦と木管の絡みや掛け合いは絶妙である。そして木管の美しさは際立っている。
 ということで、リズムを控えめにすることによって旋律のスムーズな流れを実現した演奏といえるかもしれない。既に何度も使ってきた単語をここでも持ち出すことになってしまうけれども、「異色の6番」だと思う。しかし、そのお陰で意外な面白さを味わうことができたのだから感謝しない訳にはいかない。それにしてもエンディング(15分05秒にて急ブレーキ)、ありゃいったい何なんだ? 思わず脱力である。どうせなら5番同様に「やりたい放題版」を編曲したら良かったのに、と一瞬思ったが、それにはコーダが短すぎたのであろう。

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