交響曲第5番変ロ長調
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省交響楽団
84/02/24
REVELATION RV10053

 HMV通販の特価セールにて購入。ICONE盤に満足していたが、590円では見逃す手はないだろう。当盤についていろいろネット検索したが情報は全く得られなかった。が、上記のように録音年月日が1日だけに限定されているし、会場ノイズも確認されたからライヴで間違いないだろう。なお、当盤の方がピッチが若干高い感じで、約5分というトータルタイム差の一因にもなっている。
 わが国のクラシック音楽評論界の両横綱(吉田&宇野)をして閉口、辟易、あるいは降参させてしまったというロジェストヴェンスキーの芸風は当盤でも健在だ。彼らしさという点では、全体としてはおどろおどろしい響き vs それをぶち壊しにかかる安物トランペットというコントラストが際立っている分だけICONE盤の方が上回っているかもしれない。また、当盤では第1楽章1分40秒以降の「ミソド」も脱兎のごとく駆け出すことはないし、13分04秒からのラッパの奇妙さもやや減退している感じである。しかしながら、聞きやすさでは圧倒的に当盤に軍配が上がる。同楽章3分51秒からのティンパニが独特なのも鮮明録音の当盤を聴いて初めて分かった。ただし、ICONE盤では耳鳴りを残さずにはいられないほど凄まじい響きが聞かれたのに対し、当盤の明朗そのものというべきエンディングは少々物足りなくもない。録音が最大の原因だろうが、ここはティンパニの乱暴狼藉のあるなしも少なからず影響している。何れによ、基本的解釈に決定的な違いは確認できなかった。
 ところが中間楽章となると事情は異なってくる。第2および第3楽章のトラックタイムは、それぞれ2分15秒、1分23秒も異なっており、いずれも明るい音色の当盤の方が速い。つまり、響きとの関係を正しく理解している指揮者が適切なテンポを設定したと考えられる。アダージョの出だしはICONE盤では葬送行進曲のような重々しさだったが、当盤では軽い足取りとなっている。これならオーボエのバカっぽい音色にも違和感を覚えない。スケルツォは思い切ったテンポの変更、および切り裂きラッパと地獄ティンパニの活躍によりICONE盤の方がやや上、トリオはルンルン気分全開の当盤の方が当然ながら曲想に合っている。終楽章も甲乙付けがたく、結局は好きずきの範囲内だとは思うが、ロジェヴェン編曲部分を生かし切ったという点ではICONE盤かもしれない。既に他曲のページも書いているが、ラストのブラスの饗宴(凶宴、狂宴)の輝かしさは「レニングラード交響曲」にも引けを取らないし(別働隊は使ってないのだろうか?)、その後のドンチャン騒ぎは何度聴いても笑ってしまう。これに対し、当盤はパートバランスがある程度取れていることが却って裏目に出ており、オーケストレーションの奇っ怪さが十分には伝わってこないのだ。ただし22分13秒以降は違う。原典盤の「ミーソーミレ」の音型が完全に埋もれ、「ミッミミソッソソ」というブラスのリズムだけが鳴り渡る。何というおぞましい響き。これじゃまるで盆踊りだよ。

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