交響曲第7番ホ長調
ハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送交響楽団(東)
83/05〜08
BERLIN Classics 0030162BC

 トータル60分を切る演奏であるが、この曲では56分未満という極めつけの快速演奏を繰り広げたオーマンディ盤を所持しているので、当盤だけが常軌を逸しているとはいえない。ブルックナー総合サイトのオーナーは「レーグナーがブルックナーを理解しているのは響きでわかるが、指揮者の意図はよくわからない」というわかったようなわからないような(結局私にはよく解らない)コメントを残している。が、私は指揮者の意図を「透明感にトコトンこだわって演奏する」というように理解している。昨年(2004年)発売されたヘレヴェッヘ盤とトラックタイムは非常に似ており、当盤がその現代オケ版であるといっても差し支えあるまい。カラヤンによる颯爽とした「運命」の演奏が、(古楽器演奏の登場する前の)「時代を先取りしたスタイル」(吉田秀和)であったのと同じく。このオケの持ち味である鋭い金管のみちょっと浮いているというか、指揮者の意図とは完全に合致してないように私は聞こえるが、これも好きずきの範疇かもしれない。
 第1楽章はあくまで端正。6番のような荒(粗)っぽいところも、退屈な曲に嫌気がさしたかのように(私の妄想)発作的にテンポをいじることもない。コーダこそ完全に別テンポだが、遅いテンポで一貫しているため問題なし。アダージョも決して取り乱すようなことはなく、あくまで淡々と進める。ただし、テンポ改変がブロックの変わり目に留まらず、ブロック内でもちょくちょく行っているのは意外だった。トンデモ演奏の部類に入るのではないかと思いつつ聴いていたら、やっぱりやってくれた。10分08〜32秒の金管をここまで強烈に吹かせている演奏は他に記憶がない。というより、他のパートがあくまで薄味だから引き立つのだ。これも見事な「透かし彫り」である。そしてクライマックスだが、その少し前からテンポを落として、だんだんと盛り上げていく。当然ながら響きの濁る打楽器は入らない。これがオーマンディのようにスタスタ演ってきていきなり「ジャーン」だと、それこそ何をやりたいのかがわからない演奏になってしまうが、さすがはレーグナー、その点はちゃんとわきまえている。息もつかせぬ早足のスケルツォ、冒頭こそアッサリと始まるものの腰を落とすところは落とし、主張するべきところは主張するフィナーレ。色調があくまで透明感を保っているのでついつい聞き流してしまいがちだが、これは相当にドラマティックな演奏である。騙されてはいけない。

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