交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送交響楽団(東)
83/07〜84/01
BERLIN Classics 0030632BC

 当盤のトータルタイムは58分17秒で、マーラー版使用のロジェストヴェンスキー盤を別とすれば私が所有する4番では最短である。(レーヴェ改訂版を使用したクナのBPO盤とVPO盤は、当然ながらカットがあるために相当に短いのだが、レーグナー盤には及ばないのである。)トラックタイムは順に15分16秒、13分36秒、10分53秒、18分28秒で、やはり第1楽章が最短だった。第2、第4楽章のそれぞれ13分台、18分台も他にクレンペラー&フィルハーモニア盤があるだけである。彼のウィーン響盤はトータル51分台という仰天モノらしいが、モノラルだしちょっと聴きたくない。他にも古い録音にはこのような超スピードの演奏もちょくちょく見られるようだが、昨今はギネスブックに載ってやろうという野心を持つような指揮者はいないようである。ということで、当盤は「ステレオ録音の4番」という限定付きだが、当分の間「無類のスピードを誇る演奏」という看板を挙げ続けていられるだろう。
 率直なところ、「(作曲家自身が付けたという)『ロマンティック』という表題は、このような快速テンポの演奏に対しても果たして有効だろうか?」と疑問を持たざるを得なかった。第1楽章の立ち上がりはまだ我慢できる。先述したクレンペラー盤など前例もあって免疫ができていたし、そのままなら17〜18分台になりそうな、「やや速い」テンポだからである。ところが、6分27秒のアッチェレランドから猛スピードになってしまう。私がこの曲で一番好きな中間部のコラールも、指揮者はまるで興味がないかのように素通りしてしまった。終楽章冒頭の盛り上がりもこんな慌ただしいテンポでは興醒めである。という訳で、最初は非常に抵抗があったが、繰り返し聴くうちにそうでもなくなった。単なる慣れではない。
 他のページでも紹介した「絹のブルックナー」にて、許光俊は5番を題材に展開した批評のまとめとして、「レーグナーが指揮すると、ブルックナーは軽やかに舞う」と述べている。(さらに「私はこうしたユニークなレーグナーのブルックナー演奏を高く評価している」と続けていた。)確かに5番もそうだが、「軽やかさ」はこの4番演奏の方が上回っていると私は思う。ベルリン放送響の音色は非常に明るく、そのため常に足取り軽く聞こえる。この明るい音色があってこそ当盤の疾走するようなテンポが生きるのだ。そこに思いが至ったのである。(ベルリン・フィルのような重厚な音でテンポが快速だと違和感を覚えるが、それは既に私がカラヤンのベートーヴェン演奏に大して抱く不満として、彼の目次ページに書いたことである。)ただし、「逆もまた真なり」で「疾走するようなテンポを設定しているからこそ、ベルリン放送響の明るい音色が生きる」のかは微妙である。
 何にせよ、指揮者は音色とテンポと関係をちゃんと理解した上で、このように演奏したのはどうやら確からしい。あとはこういうスタイルを受け入れるか否かが聴き手に委ねられているだけである。とは言ったものの、「この演奏を最初に聴かなくて良かった」とはつくづく思う。そうなっていたら、大部分の演奏をノロノロと感じてしまったであろうし、チェリは絶対に受け入れられなかったに違いない。したがって入門用には全く向いていないディスクだろうが、こういうのは時に実用的であるかもしれない。朝寝坊のため遅刻しそうな場合、忙しない当盤を聴けば「急げ急げ」とせっつかれているように感じるし、明るい音色に反応して身体の動きまでが軽やかになる。速やかに支度ができること請け合いである。(ホンマかいな?)

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