交響曲第6番イ長調
フーベルト・ライヒャルト指揮ヴェストファーレン交響楽団
63?
Concerto Royale 206218-360

 同じセットに収録されている4番を指揮しているホルライザーと同様、ライヒャルトについても何も知らない。一方、オケ名を強いて日本語に直せば「西行響」になるが、あるいはドイツの東人達にとって彼の地は「西方浄土州」だったのかもしれない。(「何もなければ書かなきゃいいのに」と言われそうだが、私のサービス精神の顕れと好意的に受け取ってもらいたい。)
 冒頭はいかにもつまらない出だしである。しかし、0分46秒の主題提示にビックリしてしまった。ティンパニ音がこもっていて何とも不気味だ。代わりに弦が切り裂くような鋭さで襲いかかってくる。ショルティ盤とは対照的だがこれも衝撃的であることは確かだ。リズムがキチッと合っていないが却って迫力が出ているような気もする。この曲だからということで大目に見よう。4分12秒からジワリジワリと盛り上げるのも、その後のノロノロもなかなかに良い。9分過ぎに何食わぬ顔で快速テンポに戻すやり方も巧い。楽譜を徹底的に紐解いてこういう解釈を見つけたのだろうか? その割に神経質とも聞こえないのも評価できる。これでトラックタイム17分を切っているというのは信じられないが、短時間でこれほどのスケール感を作り出すという点ではクレンペラーを上回っているかもしれない。14分27秒からまたしても悠然とした歩みになる。このままで楽章を締め括って欲しかったのだが約20秒後にギアチェンジ。こういうのは初めて聴いた。16分21秒からさらに加速。全体のバランスもへったくれもないようなテンポいじりで本来なら噴飯ものだが、これだけ妙ちきりんな演奏もそうはないので楽しめるのは事実である。繰り返し聴きたいと思うかは別だが。あと、アンサンブルの精度はやや落ちるし金管の吹き損じが耳に付くのが惜しまれる。
 第2楽章は立ち上がりこそゆったりテンポだが5分過ぎから結構速くなる(12分15秒以降も同じ)。ここでは腰を落としてこの寂しげな旋律をシミジミと演奏する指揮者が多いと思うのだが、敢えてグイグイ進むというのが面白い。要は「ヒネクレ指揮者」なのかもしれないが、とにかくこの楽章も仕掛けタップリで全く退屈しなかった。第3楽章はスケルツォもトリオも堂々としたテンポによる正攻法の演奏だが、これも指揮者にしてみれば聴き手の裏をかいたつもりかもしれない。終楽章は主題提示(0分52秒〜)での4度にわたるテンポ崩しにこそ度肝を抜かれるが、以後は第1楽章のように「省エネ」演奏には走らずタップリ16分をかけて巨大スケールを実現している。(チェリですら15分台だったから16分超というのは相当遅い。他にはC・デイヴィス、ライトナー、サロネンなど海賊盤にいくつか見られる程度であるが、快速演奏に徹していたレーグナーも2000年演奏は16分ピッタリらしいので興味はある。あと "Takahashi, A" という指揮者が約17分半という別格演奏を残しているらしい。誰か知らんけど。)遅い部分での弦の絡みの美しさなど粗さを補ってあまりある。ここだけ採ればショルティ盤より上かもしれない。
 結局のところ、演奏スタイルが楽章間で大きく異なっているため、どれがライヒャルトの本来の姿なのかハッキリしなかったというのが本音である。その七変化ぶりこそが彼の本領なのかもしれないが・・・・

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