交響曲第7番ホ長調
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
68/10/13
BMG (RCA) BVCC-38113

 CDジャーナルの新譜発売広告を見て思わず目を疑った。何とブル7に「ハイドン変奏曲」が併録されている!(時間的にも純粋に音楽的にも)ちょっと思い付かない組合せである。後にベイヌムの47年盤(Audiophile)も同じカップリングと知ったが、トータル約1時間の演奏なのでブラームスを入れたら確実に75分以上になる。(ちなみに彼の53年再録音はさらに短く59分を切っている。)ところが当盤メインのブル7は約56分、トータルタイムでは73分31秒となり、旧規格でも収まってしまうのである。他にこんな例はあるのだろうか? 原典版使用によるステレオ録音としては次々と最短記録を塗り替えてきたレーグナーですら、当盤収録のハイスピード演奏を凌駕することはできなかった。(そもそも更新を狙っていた訳ではないだろうし。ついでながら、彼の8番は75分台で中庸テンポの演奏である。)そちらのページでは当盤について「何をやりたいのかがわからない演奏」と批判的に書いた。またギーレン盤ページでは「強烈な香辛料をまぶしたビーフジャーキー」に喩えている。ここから脱線。
 私は滋賀県農業大学校という所で非常勤講師をしているが、今年(2006年)1月20日の講義で日本の食料輸入について話していた際に「米国産牛肉の輸入が再開されたら吉野家の牛丼を食べてもいいと思っている人は?」と訊ねたら、一度大学を出てから入り直したというやや年長の1名を除いて全員が挙手した。そこまで楽天的に考えているとは予想していなかった私は衝撃を受けつつも「さすがに検査はしっかりやるはずだから、たぶん大丈夫だろう」とコメントしておいた。ところが、大学に戻ってYahoo!ニュースのトピックスを見たら、危険部位として除去してあるはずの背骨付き牛肉が輸入されたというではないか! これでは私までもが信用丸潰れである。その少し前にブッシュが議会で飛ばしていた「日本人はこんなに美味いビーフを食べられなくて気の毒なこった」というジョークが私の怒りの火に油を注ぐことになった。週刊朝日の連載エッセイにて嵐山光三郎が「ブッシュは脊髄だけで作った牛丼を日本のテレビカメラの前で食ってみろ」と怒りをぶちまけていたが、そうでもしなければ気分は収まりそうにない。暴君としての資質に近年ますます磨きがかかってきた大統領のことを考えていたら、なぜか以前NEWTONで見た脳組織の写真 ─ プリオンに蝕まれてスカスカになった ─ を思い浮かべてしまった。こんな暴言投稿を私は札幌在住ネット知人であるSさん(←当サイト初登場?)の掲示板に書き込んだ。それに対して管理者から直々にレスが付き、「よりによって背骨を送ってくるというのは、ひょっとしてギャグでやってるのか」「これがアメリカンジョークってヤツなのか」などとコメントしていただいた。ところが、4月上旬には骨付きビーフが香港にも送り付けられたという事件が発生したため、私は杜撰なチェック体制に呆れる以外なかった。こう度々では折角のジョークも笑えなくなる。あるいは4月1日到着の手はずが狂って少し遅くなってしまったのだろうか? もちろんこれも不謹慎な冗句だが、何せあの国のことだから来年あたりは(食堂の陳列ケース用見本と同じく)見かけソックリにこしらえた蝋細工の骨付き肉が届くかもしれない。(ちなみに、ある本で読んだMIT学生のエイプリル・フールのイタズラは桁外れである。)それはともかく、米合衆国ではTボーン(背骨付き)ステーキが多いため、もし食用が禁じられている「へたり牛」(歩行困難牛)の出荷が恒常化していたとしたら相当にヤバい。(実は自分も向こうのステーキハウスで1度食ってしまった。最近物忘れが酷くなる一方であるのも、もしかすると・・・・何にせよ、私は彼の国の牛肉は今後も絶対に御免こうむる。吉牛も要はジャンクフードの一種だから、それを恋しがっている人間の気が知れない。)
 それとこれとは話が違うという気もするが、米国産ビーフジャーキー同様に当盤も「勘弁してよ」と愚痴りたくなるような演奏である。評執筆という使命があるから、そうも言ってられないが・・・・しかし、改めて聴いても時間節約以外の意義を認めることは全く不可能であった。かなり前に某掲示板で「ブルックナーが苦手という方にこそ聴いてほしい」というカキコを見たが、私がそういう考え方に疑問を抱いているのは既にヘレヴェッヘ盤ページに記した通りである。(ついでながら、ヘレの7番が大いに気に入ったため、続く4番も予約したのはいうまでもない。)第3楽章のみ「まとも」と感じるテンポだが、ここも相応に飛ばしていたらトータルタイムは更に1分は縮められたはずだ。これを超える男がいるとしたら、もはや軽業師(←さすがに「詐欺師」は失礼なので変更)のノリントン以外に考えられない。

おまけ
 農大で毎年使っているネタを披露しよう。世界最大の食料輸入国である日本だが、2000年の統計では品目別輸入額の1位が「豚肉(くず肉を含む)」、2位が「えび」、3位が「牛肉」となっている。ただし、単独で11位に入っている「牛くず肉」を加えると牛がトップに躍り出る。(豚と鶏がくず肉込みになっている理由は分からない。)私は「エビと日本人」(村井吉敬)のイメージが強いため、エビが不動の1位と思い込んでいたため少々意外だった。ひょっとすると名古屋人が以前ほどエビフリャーを食べなくなったのだろうか?(もちろんシャレですよ。)ここからが問題である。

 食料自給率の最も高い品目は何か?

3位は米で95%。(本来なら自給力100%以上であるが、ミニマムアクセス米として毎年5%輸入しなくてはいけない。とはいえ主食用は完全自給で、輸入米は泡盛や製菓など加工用に向けられている。ところが、それでも余ってきているという話だ。政府は買い手を求めているらしいが、酒造を解放でもしない限り無理だろう。)2位が鶏卵の96%。(ただし飼料用トウモロコシは大部分が輸入だから、実質的にははるかに低い自給率となる。これは畜産物全てについて当てはまる。)そして1位だが何と100%。ノーヒントで正答を出した学生はこれまで皆無である。(例えばコンニャクは日本人以外食べないが原料は相当部分を輸入に頼っている。ちなみに、やはり伝統的日本食のソバも国産は2割にも満たない。ただし、ここでも日本の消費量が圧倒的に多いと思っていたが、トップテン入りがやっとで1位はウクライナということだ。知らなかった。)答えはここに書かないが、検索すればきっとすぐに見つかるだろう。ちょっとしたトリビアである。ちなみに、かつて上記Sさんの掲示板でこれを出題した時、彼は「韓国なら犬がそうだろうな」という所から見事に正解を導いた。(←これって大ヒントですから。)

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