交響曲第7番ホ長調
クルト・マズア指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
91/09/13
Teldec 3984-21338-2

 新旧録音とも4番に圧倒的な相性の良さを示したマズアだけに、同系列の7番演奏には聴く前から全く不安を抱いていなかったが、果たして期待していたとおりの名演だった。ライブ録音ながら録音は超優秀である。トータル63分と少々速めだが、第1楽章4分19秒からの進行などはまさに「スルスル作戦」(許光俊)の面目躍如である。元が速いために5分台に入ってから微加速しているのも全く気に障らない。10分18秒以降など遅い部分も粘らない。御飯を水洗してから作った雑炊のようである。アダージョも同様。つっかえることが全然ないから知らぬ内に音楽に浸り切ってしまい終わってしまう。指揮者の芸風からは打楽器なしのクライマックスを選択したのは100%正しいといえる。後半楽章も打楽器やブラスが抑制気味のため流れはスムーズそのものである。ということで私は始終快かったが、とにかく作為を感じさせない演奏ゆえ「無策」とケチを付ける人はいるだろう。
 この演奏はマズアのNYP音楽監督就任直後に行われたということだが、それでこの完成度だから当盤をリアルタイムで入手した人は以降の録音に少なからず期待を抱いたのではないかと想像する。実際、2年後の4番でも名演を聴かせてくれている。ところが、結局は後任にポストを譲るまでの間に特に目立った成果を上げることはできなかったように思われる。「メンデルスゾーン専用指揮者」(鈴木淳史)の宿命(レパートリーの狭さが災い)だろうか? それともクラシック業界そのものが不振に陥ったため? 考えるに、(話題性のある指揮者にもかかわらず)マゼール時代に入ってからも全くといっていいほど新譜発売の報が伝わってこないから、あるいは後者が本当の原因かもしれない。ついでながら、メータ→マズア→マゼールと来たから以降もイニシャルMの指揮者が続くのだろうか? いや、もしかすると選考基準は目次ページに書いたように「悪事企ての得意そうな顔」かもしれないな。次は誰だろう?

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