交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
クルト・マズア指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
93/10
Teldec 3984-21338-2

 某掲示板にて「○○盤は演奏はいいけど音質がイマイチ」という書き込みに対し、「音が良いのを名演と思っているならマズアでも聴いてろ」などというレスが付いているのを何度か見たことがあるが、当盤の優秀性は決して音質だけに留まらない。演奏内容も素晴らしいに尽きる。トータルタイム約67分でLGO盤より少し伸びたが、マズアの「速めにスルスル作戦」(旧盤評参照)は健在だ。そこに非の打ち所がない録音が加わっているのだから「鬼に金棒」である。
 「犬」通販の送料無料ライン(2500円)をクリアするために同時購入した品(7番とセットの2枚組ながら1000円ちょっとだったはず)と記憶しているが、ステレオ録音によるニューヨーク・フィルのブルックナーが未聴だったことも動機の1つである。(バーンスタインの9番旧盤が後に加わっている。)しかしながら、実際聴いてもNYPというのは特徴の全くつかめないオケである。シカゴ響あるいは新興オケのように圧倒的パワーをウリにする訳ではない。フィラデルフィア管の豪華絢爛サウンドでもない。かといってクリーヴランド管のように端正な響きを聴かせてくれることもない。あるいはバンスタなら例の威勢の良いパフォーマンスから判別できるかもしれないが、メータやシノーポリのディスクを聴いてもおそらく「国籍不明」として白旗を揚げるしかないという気がする。当盤も同様だ。しかしながら、このようにクセのないニュートラルな音は(マーツァル&ハレ管盤もそうだったが)4番では抜群の威力を発揮するのではないかと私は思っている。オーボエが旋律を受け持つ第3楽章トリオの美しさなど、旧盤ページで特記した部分の魅力は若干減少しているものの全体的には底上げされている。指揮者の円熟なのか優秀録音のお陰なのかまでは不明だが、とにかく評価は断然上である。こういうのを聴くと「アメリカや日本のオーケストラはまったくヨーロッパに敵わない」といった意見が如何にいい加減であるかが実感できるはずだ。

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