交響曲第9番ニ短調
ヘスス・ロペス=コボス指揮シンシナティ交響楽団
92/01/27
TELARC CD-80299

 目次ページでも触れたが、阿佐田達造が「ファン必聴の『と』盤」して紹介していただけに大いに期待しつつ聴いた。冒頭からインテンポで進む。よしよし。インフレーションからビッグバンまでの盛り上げ方も申し分なし。そして2分34秒からの騒々しさといったら! これはカラヤンの66年盤以上だ。コーダも凄い。ティンパニ付加なしで「ダダーン」をここまで迫力あるものにするとは! 驚異的である。こういう演奏を「無機的」という理由で斥けたい人は少なくないだろうが、ならば(カラヤンやショルティなどは後回しにして)真っ先に当盤を排除すべきであろう。誰も止めやせんからそうしなさい。
 とにかくアホなテンポいじりをしていないから非難しようにもそういう箇所は全く見つからない。ビッグバン以降も数々の重要なイベントがあったと思われる宇宙誕生を表現している曲だけに、(7番では裏目に出ていたけれども)些細なところもいちいち盛り上げるという芸風が見事なまでに功を奏している。6番もここまで徹底的に喧しく演ってくれたらどんなに良かったか。
 これまで私は深謀遠慮の感じられるヴァントやチェリビダッケの演奏を高く評価してきたけれども、もしかすると当盤のように一聴すると何も考えていないような(本当に考えてない?)演奏こそが自分の理想に最も近いのかもしれないとまで思った。スケルツォの破壊力は当盤同様12分台という遅めのテンポを設定したバーンスタインの新盤をはるかに上回っているし、終楽章も破壊を表現している部分は右に出るディスクが全く思い浮かばないほど圧倒的に素晴らしい。(7番アダージョと同じく)静謐さ不足ゆえ終曲から神秘性が全く感じられないのが減点対象だが、こればっかりはしゃーないわな。

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