交響曲第7番ホ長調
リノス・アンサンブル指揮(室内楽版)
99/01/04〜07
CAPRICCIO 10 864

 テンポ設定、パートバランス、音質、すべて申し分なし。名演である。あるCD評サイトでかなり高く評価されていたのを見て購入に踏み切ったが大正解だった。ネット通販にはシェーンベルクの弟子達が編曲したという紹介文が出ていたため、あるいは前衛的というか無調や不協和音も使用されているかと思ったが、そんなことは一切なく、とても耳当たりの良い音楽である。(そういえば、ラサール弦楽四重奏団による「新ウィーン学派弦楽四重奏全集」4枚組のDISC3に収録されていた美山さんの弦楽四重奏曲ニ長調も、ハイドンを思わせるような明快な音楽であった。若い頃(23歳)の作品で結局出版されなかったということだが、それが何故にあんな作風へと変わってしまったのだろう?)なので、「新ウィーン楽派の面々によるブルックナー観が、この編曲を通して見えてくるのは間違いありません」というのはよく解らなかったが、それ以降の解説(「オルガン臭」を排除、色彩の変化が元のオーケストラ版よりも強い、対旋律や経過句を明瞭かつ立体的に響かせることに成功、などなど)は非常に見事で、それに付け加えることは何もないという気がする。
 ネット上で賛否が分かれたのがハルモニウムとピアノという原曲にはない鍵盤楽器の使用であるが(他はクラリネット、ホルン、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成)、私はオーケストラ版とは全くの別物と割り切って鑑賞できるので違和感は特になかった。というより、単に楽器を間引いただけなら痩せっぽちに聞こえるだけと想像するので、何か一捻りしてあった方がありがたい。実際とても効果的だと思った。(編成を極端に切りつめて声楽曲を演奏するのが昨今はやりのようだが、合唱が各パート数人、時には1人だけというバッハのカンタータや受難曲なんか絶対聴きたくない。)さらに人数を減らすとしたら、同じ理由で弦楽四重奏よりはピアノ・トリオだろう。極限まで規模を縮小したオルガン独奏版のCDも出ており、同じ奏者がアダージョ冒頭を弾くのを朝比奈のブルックナー特集番組(大阪朝日放送制作)で観たことがある。その時は興味をそそられたけれども、相当なスタスタテンポらしいので見送ることにした。(さらなる人員削減も不可能ではないが、いくら何でも「64分33秒」と騙って売るわけにもいくまい。)
 夜遅くなってからブルックナーを聴こうと思っても、フルオーケストラでは音量を絞るとピアニシモが全然聞こえなくなってしまうのであるが、当盤にはその心配がない。ダイナミックレンジは私が持っている48番のオルガン版よりも狭いようである。なので就寝前に聴くためのディスクとして重宝している。(←フツーに室内楽などを聴いてりゃいいだけなのだが・・・・)

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