交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団
66/01/10〜11
BMG (TOWER RECORDS) TWCL-3003

 タワーレコードの名盤復刻(初CD化)シリーズとして発売されたため購入。もちろん税込1050円という低価格が最大の理由だが、未所有だったボストン響のブルックナーを聴きたかったということもある。
 第1楽章冒頭は速めのテンポだが1分15秒(43小節?)で落とす。シノーポリ盤のページでも触れているが、浅岡弘和によるとこれはフルトヴェングラー盤などで聞かれる改訂版の解釈なのだそうだ。1分33秒からの全奏で気が付いたが、音質は「安かろう悪かろう」である。透明感はイマイチだし響きも混濁&ビリつき気味だ。さて、その後もしばらくは中庸テンポが続くから17分台で終わるような演奏とは思えない。ところが3分25秒頃から突如の加速によりトップスピードに入ってしまう。以降も7分10秒〜、14分27秒〜、そしてコーダなど何かに駆られているかのように滅法速い部分がたびたび登場する。つまりフルヴェンとレーグナーが同居しているような演奏であるから聴き心地は決して良いものではない。落ち着いて聴けたのが第3楽章だけというのも何だかなあ、というのが偽らざる気持ちである。
 特記しておくべきことがある。ブラスが全然鳴っていない。というより正確にはトランペットが全曲を通じほとんど聞こえないのである。(これはLP時代からの特徴だったようで、某掲示板でもその点に不満を述べている人がいた。)何せユニオンの力が強い国なので、運悪くレコーディング時に奏者達が揃ってストライキに入っていたのではないか、などとしょーもないことを考えたくなるほどである。そのため、他盤では絶対に聞こえない内声部が耳に飛び込んできたりして新鮮ではあったが、そんなものを諸手を挙げて賞賛する気には到底なれない。学習用(楽譜の勉強をする人向け)には使えても観賞用には全く向いていない。徹頭徹尾盛り上がらない第1楽章中間部コラールは異様そのものである。
 ついでに帯とブックレットのコメントにもケチを付けておく。前者の「ブルックナーならではの澄んだ響きが、一点の曇りもない青空を感じさせてくれます」に対しては「オマエ本当に聴いたのか?」と問い詰めたくなる。「何の抵抗もなく、ブルックナーの世界に浸れる」は嘘っぱちもいいところである。「ラインスドルフのブルックナーは、堅固な造形と健康的で明快な表現に特色があり」は必ずしも誤りではないが、「明快」については例の奇妙な音色を生んだマイクのセッティングミス、つまり偶然の産物ではないかと思えてならない。だから「『ロマンティック』の解釈には最適です」にも思わず「ハァ?」(摩邪風)と言いたくなってしまった。この点では「重なり合う音もクリアーに響かせる」などと賞賛していた解説者(岡村晃)も同罪だ。さらに「明晰さとロマンティシズムの見事なバランス! 正にこれは明快でロマンティックな名演である」という結びにしても、当盤の響きも解釈もザッハリッヒであるとしか聞こえなかった私は首を捻るしかない。そこにフルヴェンを思わせるようなロマンティックな部分が混在しているのだから、むしろ「アンバランス」あるいは「ミスマッチ」こそが特徴ではないかという気がする。

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