交響曲第9番ニ短調
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
85/06/06
ORFEO C 550 011 B

 第1楽章のトラックタイムは84年BPO盤よりも1分以上短いのに、冒頭のテンポがより遅いので意外に感じる。1分過ぎの盛り上げ方もさらに徹底している。ところが1分26秒からは折り目正しく進められ、こっちの方がBPOらしかったりする。少し加速するがこれは許容範囲、問題はその先だ。2分34秒からは弦のトレモロと金管がかなりズレている。最後に帳尻が合っているため、これはマイクからの距離の違いによる時間差ではない。ヴァント来日公演映像ページには「なかなか味なことをやる」と書いたが、改めて聴くとかなり気になる。「崩し」ではなく「崩れ」と感じてしまった。とはいえ、この指揮者とオケだから大きな乱れはない。この後も速い部分ではグイグイと前に進むことが多く、BPO風の剛毅さが姿を見せるのが面白い。当盤の方がテンポのメリハリが利いているためにトラックタイムが短くなっているが、その分私の好みからは遠くなっている。ただし、コーダだけはドラマティックな表現で上回る当盤を採りたい。
 第2楽章も激しさとメリハリで当盤。これは音質の違いが非常に大きい。ということで遅ればせながら録音についてだが、かなりメタリックで鋭い音質である。MPOの演奏と言われたら信じてしまいそうである。ヒスが混入し、抜けももう一つだったBPO盤よりは圧倒的に優れている。BRSOによる9番ということでは他にシューリヒトとのライヴ(ORFEO)を持っているが、あれはモノなので措くとして、このオケの明るい音色は9番との相性はどうだろうと懸念していたが、それは見事に吹き飛んだ。
 終楽章も見事な出来映えで84年盤と甲乙付けがたい。ハ長調の大爆発を弦がトレモロで支えるが、その弾き方が糸を引く納豆のようにネチっこい。それが妙にシックリと来る。BPOのような重厚なオケだったら粘ってどうしようもなかったかもしれない。当盤も終盤に入ってからが素晴らしい。19分54秒からの伴奏リズムがきっちり三拍子を刻んでいる。それが大きくなるにつれて凄味も増してくる。BPO盤のザワザワした雰囲気も決して悪くはなかったが、衝撃度は当盤の方が上。ただし、弦の刻みが終始一貫して執拗であり、いくら何でもやり過ぎではないかと思った。ようやく静寂なコーダが訪れてホッとしたのも束の間、24分58秒でホルンが落っこちる。これで何回目だろう? よくクビにならなかったものだ。

9番のページ   クーベリックのページ