交響曲第8番ハ短調
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
63/11/08
FIC Inc. ANC-15

 METEORレーベルの68番2枚組の入手が容易ではないと思われたため、その代わりとしてモノラル録音も承知の上で当盤をヤフオクにてゲット。たしか1000円プラス諸経費だった。(同じ録音がORFEOから正規盤として出ているが、そちらもモノらしいので買い直す気はない。)第1楽章6分頃でホルンソロがトチッていたりする(3楽章でもコケている)が、おそらく一発録りだろうから仕方がない。拡がりがないだけでノイズ混入はなく、モノラルとしては上の部類だろう。が、激しい演奏ながらテンポ揺らしは抑制気味であるため、少々平板な印象を受けてしまうのもやむを得ない。(ステレオだったら均整が取れている、として褒めるところだが。)とはいえ、前半2楽章は立派な演奏である。
 ところが、ムラヴィンスキー盤同様に終楽章とあまりトラックタイム差がない第3楽章には戸惑ってしまう。後の77年盤では両楽章は3分以上も違っているのだから訳が分からない。何にせよ、クーベリックが「ライヴだからスタジオ録音とは全く違った演奏をする」というのが誤りであることは明らかである。やはり14年という隔たりがトータルタイムでの4分以上の差を生み出しているのだ。ほぼ同時期の演奏でもスタイルをガラッと変えるケーゲルなどとはタイプが違う指揮者と考えて良いだろう。さて、そのアダージョだが、シンミリモードでの美しさは際立っているものの、激しい部分のスタスタテンポにはちょっと物足りなさを感じてしまう。が、前楽章が速かっただけにインテンポで進む終楽章冒頭は実に堂々としたものに聞こえる。どうも指揮者はアダージョのピークを最重要点(全曲のクライマックス)とは考えず、単なる通過点として認識していたようである。ならば終楽章の終わりにとんでもない極大点が出現するはず、と思って聴いていたら、確かに20分15秒からの劇的な盛り上げ方は凄い。ところが21分18秒から早足で、ハ長調に転調してからはさらに加速。あれよあれよと思っている内に終わってしまった。これではまるでフルトヴェングラーのエンディングだ。(最後の「ミレド」がなだれ込むようでなく、「ミッレッド」と3音が辛うじて識別できる程度に区切っていたのは違うが。)もしかして、この時期のクーベリックはフルヴェンの信奉者だったのだろうか? そして、そこから徐々に脱却していったのか、77年盤を聴いて判断することにする。(つづく。)

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