交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
79/11/18〜21
CBS SONY 30DC-764

 「鐘」盤のページにグダグダ書いたように、あちらと当盤の録音年代にはさほど隔たりがないと考えられるため、当盤のゆったりテンポを「加齢による遅延行為」と考えるのは適当ではない。  吉田真が「クラシック名盤&裏名盤ガイド」にて当盤を本命に挙げている。「現在の標準的な楽譜と考えられるノヴァーク2稿から1枚選ぶとすれば」という前提付きだが、「迷うことなく」当盤なのだそうだ。「速からず遅からず、曲想に応じて自然に微妙に変化するテンポ」「強引さや刺激的な部分が全くないにもかかわらず迫力にも欠けていない」「両翼配置の効果もあって申し分のない録音」などを理由にひとつの理想的なオーケストラ演奏といって良いほどの出来栄え」とまで絶賛していた。4番目次ページに載せた「ブルックナー・ザ・ベスト」への投稿にあるように、私もこの演奏を1位に挙げていたこともあったが、それはこの本の吉田の評価に多分に影響されている。廃盤で入手できなかったのがようやく東京出張時に中古屋で見つかった、という骨折入手効果?も手伝っている。(以下余談。私が持っているのは別ページでも触れた「ベスト・クラシック100」の最初のシリーズ収録の3000円の品だが、初発は38DC-8というとんでもない番号だった。さらに調べてみたら、1982年10月1日に世界で初めて発売された50枚のうちの1枚だそうである。クーベリックは目次ページで触れたモーツァルト後期交響曲も38DC-3から5までの番号で分売されていた。ついでに書くと、最初の中の最初というべき38DC-1は、マゼール&VPOによる「運命」「未完成」来日公演盤である。特に聴いてみたいという演奏でもないが、見つけたら買っておこう。プレミアムを期待してのことであるから、もちろん初発盤に限る。)
 第1楽章は非常に流麗な演奏で、特に第2主題群が素晴らしい。「ここでテンポを落とすのか」と思った次の瞬間には元に戻っている。要は揺さぶり攻撃なのだが、それが実に巧妙なのである。一方、激しいところでは金管が積極的にブイブイ鳴らせているが決して粗くならないのも流石だ。ただし10分47秒のコラールのピーク直前を引っ張るのはどうか。私には不自然と思われるのだが。第2楽章はBRSOの明るい音色ではどうかと思ったが、全く問題なし。低弦による旋律の重量感も不足していない。ただし、クライマックス(13分07秒〜)でのティンパニの最初の打撃音が突出しているのは私の好みではない。第3楽章は躍動感がたまらない。終楽章は最も感銘を受けた。1分24秒のピークの少し前で、金管の絡みによって立体感が出ている。これは分離とバランスが良くなければ絶対に聴かれないものである。2分33秒からの2度目の盛り上がりも迫力満点である。以下も同様。ということで、前段落に挙げた吉田の「理想的」という評は全く正しい。しかし、最上位にランクさせるためには何かプラスアルファのようなものが欲しいとは思った。

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