交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
70/01/30
The Bells of Saint Florian AB-16

 目次ページやCBS盤ページに書いたように、私が初めて聴いた演奏である正規盤の入手になかなか成功しなかったため、代替品として購入したのが当盤である。ブルックナー総合サイトに投稿されたディスク評が絶賛に近いものだっただけに、海賊でも不安は全くなかった。ヒスノイズはごく僅かでヘッドフォンで聴かなければ気にならない。正規盤ページにも書いたが、第1楽章のみ当盤の方が1分以上短い。両盤を聴き比べると第1楽章冒頭の盛り上がり(当盤では0分57秒まで)の勢いは、当然といえばそれまでだがライヴの当盤が圧倒的に上回る。他の箇所も同じで、例えば18分26秒からはコーダ直前までを正規盤のように間を取らずまっしぐらに突っ走る。ただし、加速をかけるところではテンポが前のめりになってしまい、ほんの少しだがアンサンブルの乱れを感じてしまうのはマイナスだ(17分24秒〜などは顕著)。また、時にやかましさやせわしなさも感じてしまうが、何せ一発録りなのだから、これは聴く側も割り切らなければどうしようもないだろう。
 ここで録音に戻ると、メリハリが非常に利いているので金管や木管が生々しく聞こえる。(人によっては当たりがキツイと感じるだろう。)ゆえに即興性と音質の相乗効果によって荒々しさは正規盤以上だが、その分端正さは後退している。ということで、当盤も決して悪い出来ではないものの、私としては僅かの差でスタジオ録音盤に軍配を上げたい。と一度は書いたが、今日(2005年5月23日)通勤中の車の中で正規盤を聴いて驚いた。第1楽章14分53秒で変な雑音が入っている。一瞬、何かを踏んづけたのかと思った。後でヘッドフォンで聴くと、カメラのシャッター音のようである。編集過程で紛れ込んだのかもしれないが、スタジオ録音だけにかなり減点せざるを得ない。よって、両盤に収録されている音楽だけを比較すれば勝負はほぼ互角である。とはいえ、正規盤が廉価で出てしまった以上、当盤の存在意義は相当薄れてしまったように思う。特に解説書がないのは圧倒的に不利だ。

2005年10月追記
 ザンデルリンクの4番正規盤(Profil)のゴタゴタがようやく片づいたとホッとしたのも束の間、またしても面倒に巻き込まれてしまった。実は「AUDITEライヴ・シリーズ」として発売されたクーベリック&BRSOによる70年演奏の3番(AU92543)を注文しており、あとは同時注文品の入荷を待つばかりだったのだが、そのディスクを聴いたらしき人が某掲示板のクーベリック・スレッドに「鐘と同一らしい」と書き込んでいたのである。同様のザンデルリンクのケースでは直ちにキャンセルしたものの後に別演奏と判明したため慌てて別の通販に再注文することになり、少々損をすることになったから短気は禁物である。とはいえ、同一箇所で金管にミスがあると具体的に指摘されているし、John F. Berky氏によるディスコグラフィーに掲載されたトラックタイムも極めて近い。(ちなみに、その "New Releases & Discoveries" ページではAUDITE盤の録音年月日をクーベリックのBRSO音楽監督就任の翌年にあたる62年11月9日としている。実際演奏記録は残っているようだが、日本語の宣伝文にはあくまで70年1月30日とあるから謎だ。)そうなると、やはり同一演奏と考える方が妥当だろう。さらに検索してみたところ、ある通販サイトに「おそらくBells of St. Florian(廃盤)やEN LARMESのELS-02-215などで既出の音源だが、ディスコグラフィによっては1980年10月のライヴとされている物もある」と書かれていたので、そちらを信用することにした。なお、そのページには「マスターからの初発売」という記述もあり、確かに音質優秀なのかもしれないが、本文に記したように「鐘」もそんなに劣悪ではないから買い直す必要は全然感じていない。SACDとかマルチch層のメリットも今のところは享受できないし・・・・
 いずれにしても、もし当盤が本当に70年の演奏だとすれば、正規盤ページの最初の2段落に書いたことが随分と間抜け&ピンぼけになってしまうから当方としては大迷惑である。ただし、改めて両盤を聴き比べても即興性の有無が感じられるだけで演奏スタイルはほとんど同じであるという私の見解は変わらなかった。よって、向こうのページには一切手を加えないことにした。(単に面倒なだけだったりする。)正規盤だからといって録音年月日が100%正しいとは限らない訳だし(などと最後には居直ってみる。)

2005年11月追記
 Audite正規盤と数種出回っている海賊盤(当「鐘」盤の他、「涙」や「偉大な芸術家」)が62年11月9日の同一演奏であるという記述が最近John F. Berky氏のサイトに掲載された。そうなると King International や各種通販サイトの「1970年ライヴ」が誤りということになってしまい、私も困惑するばかりである。ただし、何を根拠として氏がそう断定したのかが不明であるから、不本意ながら3通りの録音年月日を併記しておく。仮に62年録音だとすると18年経ってもスタイルが大きく変わっていないことになるが、それも決してあり得ぬ話ではない。

2006年1月追記
 Auditeのサイト(www.audite.de)に「ブックレットに印刷されている "November 9th 1962" という演奏年月日は誤りで、正しくは "January 30th 1970" である」という旨の訂正文が掲載された(次回プレスから修正する模様)。よって、正規盤と同一演奏と思しき当「鐘」盤についても上記に確定することとした。やれやれ。

3番のページ   クーベリックのページ