交響曲第9番ニ短調
フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ放送交響楽団
62/05/22
WEITBLICK SSS0007-2

 通販サイトの宣伝文にある「ステレオ・ライヴ」が全くの嘘っぱちであることは既に8番ページで触れたが、(直後の「当時の実況としては非常に鮮明」はまあ当たっているものの)「ヴァイオリンを両翼に置く正統的楽器配置がもたらす立体的なサウンドは実に効果的で、低弦の重い音がオケのド真中から全体をガッシリと支える独特のサウンドも秀逸です」というコメントはいくら何でも酷すぎる。聴かずに書いたことは明らかであるが、こんなデタラメいつまでも載せとくなよ! なお、ライブ収録後の修正は行われていないようで、ソロ部分でのミスが結構聴かれる。
 第1楽章冒頭でホルンに呼応するラッパの音にタメがない。この時点で嫌な予感がしたが、果たして1分23分から小走りになってガッカリ。ところが1分44秒で落ち着いたテンポに戻り、そのままビッグバンに突入するから聴くに堪えないということはないけれども、それが終わってからのピチカートで再び早足になるからよく解らない。要は相当に動的な演奏スタイルなのであるが、曲の性格(というより私の好み?)との相性は全然良くない。提示部とは異なりビッグバン再現(13分15秒〜)の直前では加速するなど、解釈に一貫性はまるで感じられず、結局何がやりたいのかが伝わらないどころか、聴き手のフラストレーションを積み上げるだけの演奏としか評価できない。(それがどうしようもないアホ解釈なら爆発によって解放できたのであろうが、決定的なダメ演奏ではないからそれも不可能である。)これが仮にステレオだったとしても上位に食い込むことは絶対なかったはずだ。というより、下手に音質が良かったらさらに癇に障っていたかもしれない。(そういえば中間部のテンポいじりは何となく朝比奈と似ているように思えなくもない。)とはいえ、そこまで気に食わなかったのはこの楽章のみである。スケルツォ主部の力強さは見事だし、最後の1音を遅れ気味にして息も絶え絶えという感じで締め括るのもいい。また、第3楽章冒頭の弦がうねるのは同じ第9でもマーラーみたいだし、4分33秒以降など低弦のノロノロ歩みもまるで恨み節を聴かされているようで妙に聴き応えがあった。(両端楽章のバランスはメチャメチャだし、ここでもブロックごととはいえテンポの変更が大胆に過ぎて交響詩のようであり、ちっともブルックナーっぽくないが・・・・)そういえば、終曲直前(23分48秒〜)における32分音符の弦の刻みがハッキリと聞こえるところはマーラーを得意にしていた某指揮者の演奏(2種の9番録音が存在)と似ているような気がするが、彼がこの7年後に旧盤を録音する際に当盤を参考にした可能性は全くないのだろうか?

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