交響曲第7番ホ長調
フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
58/06/20〜22
BERLIN Classics BC 2114-2

 録音に言及したネット評が出ている。「二組で一組だけ左右反対のスピーカーで聞いてみると、なにかおかしい。一組だけできいても変。おそらくこれは人工ステレオ化か?」とあるが、これは紛れもなく純正モノラルである。(擬似ステではない。この件に関しては8番か9番のページでも触れるつもり。)事前に知っていたらネットオークションで見かけても絶対入札することはなかったから、そうと判明した時の私の落胆は小さくなかった。なお、そのサイトには「1958年の録音にしては良くとれている?」とも書かれている。それは間違いではないが、ステレオ録音が普及し始めていたにもかかわらずモノという時点で既に噴飯モノであるから、これで音質が悪かったら何かに当たり散らさなければ到底私の気は晴れなかったところである。(既にあるページに記したように、ディスクそのものをストレス解消のはけ口としたこともある。もちろん再生不能となった。)
 演奏については5番評で述べたことが一部当てはまる。第1楽章は淡々とした出だしながら8分32秒や14分39秒ではローギヤに入れて粘る。なにせ平板な音質なので、せめてテンポだけでもメリハリが利いているのはありがたい。とはいえ、曲想の変わり目に向かって突進するような「大根役者」ではないし、5番のように大きくうねって曲を壊してしまわないのはこの指揮者の良識を示している。逆に第2楽章は少々物足りなかった。(どっちの楽章にしても指揮者には全く責任がないのだが。)再現部(14分37秒〜)の進め方は提示部よりもはるかに念が入っており、クライマックスが近づくにつれてさらに遅くなる。ステレオだったらどんなに美しく感じられたことだろう、と惜しまれてならなかった。なお、当盤の2楽章は打楽器不採用である。直前の進行がとにかく重苦しいので相当派手なドンチャン騒ぎをやらかすはずと予想していた私ははぐらかされてしまった(同じくモノラル録音&ハース版のムラヴィンスキー盤はあれでいい。)以降のスタスタテンポと共にこのアンバランスは減点対象とせざるを得ない。なお、当ページ執筆のため改めて聴いて第3楽章2分53秒の欠落を知った。(1音だけなので聞き逃していた。)結局のところ「傷物」だった訳だが、仮にそれがなくとも、そして優秀なステレオ録音だったとしても当盤はとても上位に食い込めそうにはない。アダージョの打楽器採用だけでなく、楽章ごとに味付けがマチマチで、濃厚なのか淡々なのか(ハース版なら当然後者であるべき)がハッキリしない演奏だったからである。

おまけ
 ここでも「CDジャーナル」データベースより。「戦後のゲヴァントハウス管の一つの頂点を築いた巨匠の遺産の復活。伝統の強みを感じさせる質実剛健なブルックナーだが,随所でこの指揮者ならではのさりげない表情が絶妙なニュアンスを醸し出しているためまったく鈍重さは感じさせない。」とあり、字数の制約をものともせず見事的を射ていると思う。5番評と違って文章もまともである。誰だろう?

7番のページ   コンヴィチュニーのページ