交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
フランツ・コンヴィチュニー指揮????楽団(註)
1960
DENON COCO-75401
(註:私はNHK-FM日曜朝の「20世紀の名演奏」にて黒田恭一がよく使う「名称不明の管弦楽団」というちょっと怪しい言い回しが結構好きである。)

コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1960年、COCO-75401)
コンヴィチュニー指揮ウィーン交響楽団(1961年、COCO-75407)

ネット検索したところ、コンヴィチュニーの4番には上記のようにDENONレーベルから同じ日(93/03/21)に発売された2種の国内盤が存在すると判った。(他にチェコ・フィルとの52年モノラル録音がある。)ところがブルックナーのおそらく世界で最も詳細な英語版ディスコグラフィサイトでは、Eurodisc原盤のディスクについて "Vienna Symphony Orch. 1961 Also listed as Leipzig" と記載され、表記されている2通りのトータルタイムもほとんど同じである。(75401は75407よりトラック1が20秒短く、逆にトラック2が20秒短いけれども、両楽章間のインターバルをどちらのトラックに入れるかで生じた差異に過ぎないと思われる。)COCO-75401は記載すらされていないことから、作成者はVSOとの共演と認識しているようである。こうなると、上が本当にLGOとVSOによる別音源なのだろうかという疑問が湧いてきた。本来ならCOCO-75407を入手して確かめてみたいところだが、廃盤であるから今すぐという訳にはいかない。そこでマズアのLGO盤とフェドセーエフのVSO盤を取り出して聴き比べてみた。どれも快速系の演奏である。
 コンヴィチュニー盤は全体的な響きや金管とティンパニの鳴りがフェドセーエフ盤と近く、一方マズア盤とは同じオケとは到底思われないほど異なっている。これで「勝負アリ」と軍配を上げたいところだが、実はマズア盤の音質は明らかにヘンである。ゆえに録音機材や技師の違いが大きく影響していると考えざるを得ず、それだけでは断言できなかった。どうにも引っかかったのは、引きずり気味のトレモロがコンヴィチュニーとマズアに共通していること。(フェドセーエフは違う。)これがオケの特徴なのか東独系指揮者の傾向なのかが判らない。よって、遺憾ではあるが当盤のオケを特定することはできなかった。
 ちなみにamazon.co.jpで読むことのできるレビュー(「CDジャーナル」データベース)は以下の通りである。

【COCO-75401】
 フレージング,音色,アンサンブルが雑で,これがゲヴァントハウス管?#と思ってしまう箇所が散見される。ダイナミックレンジのとても狭い演奏。第1楽章は急いでる感じだが,第2楽章以降はロマンティックな表現。コンヴィチュニー・ファン向けのCD。

【COCO-75407】
 実に素朴で暖かく,かつ瑞々しい音のする演奏だ。しかも,単に渋いだけでなく気品や香りもある。このような演奏に出会うと本当にホッとする。再評価,再認識すべき演奏・指揮者である。なお,COCO75401とはオケが違うので注意。演奏は瓜ふたつ。

この執筆者は「オケが違う」として注意を喚起しつつも「演奏は瓜ふたつ」と認識していたようである。が、同一演奏にもかかわらず音質の違いによって別演奏と誤解され、75401および75407として売られていたと判明すれば、業者のみならず彼も嗤い者になってしまうのは避けられないが・・・・(もう時効か?)
 オケ問題はひとまず措いて演奏評に移るが、第1、第2楽章はそれぞれ16分台、14分台というクレ並みの快速演奏であり、既にこの時点で私の好みから外れている。第3楽章は大変躍動感があり、終楽章もスタスタながら冒頭から迫力十分で悪くないのだが、ラストはあまりにも素っ気なさすぎである。それでもレーグナー盤のような鋭さと透明感を備えていれば、それなりに聴き応えはあったはず。(←大江口調)しかしながら、(COCO-75401=COCO-75407と見なして)上のレビューから引くと当盤は「実に素朴で暖かく,かつ瑞々しい音のする演奏」であるため、私にとっては単なる軽量級の演奏で終わってしまっている。(「単に渋いだけでなく気品や香りもある」は当たっているかもしれないが。)それだけならまだしも、先述した「引きずり弦」がミンミンゼミの声や蚊の羽音のように耳に付いて正直ウザかった。(ついでながら、木管も基本的には美しいが時にソロが安っぽく聞こえる。)つまり「このような演奏に出会うと本当にホッとする」という件の評者とは大きく意見を異にしているという訳だ。残念ながら、この4番をいくら聴いても「再評価,再認識すべき演奏・指揮者である」という評価に合点がいくことはなさそうだ。よってサッサと5番ページの執筆に移る。

2008年11月追記
 先日ヤフオクにて上記75407を落札してしまった。我ながら物好きにも程があるというものだ。で試聴してみたら思った通りの同一音源(音割れやらノイズの入る箇所がピッタリ一致)。結局1000円少々の無駄な出費をしただけになった。

4番のページ   コンヴィチュニーのページ