交響曲第8番ハ短調
オットー・クレンペラー指揮ケルン放送交響楽団
57/06/07
HUNT PRODUCTIONS HUNTCD 704

 私が所有するクレンペラーのブルックナーとしては最も早い時期の録音。他ページに書いているように、8番唯一の正規盤であるフィルハーモニア管とのスタジオ録音(72年)が入手困難のため、ヤフオクで入手したのだが(そんなに高くなかった)、おそらく15年の間に演奏スタイルが大きく変わってしまっていると考えられるので、「代用品」には全然なっていないと思う。当盤はノヴァーク2稿でノーカット、にもかかわらずトータルタイムは72分弱で、シューリヒトのVPOスタジオ盤やベームのライヴ盤(2種)などに近い。この演奏時間からは「爆演」を想像したが、少し違った。
 激しくて厳しい。が、ウケを狙って暴れ回ったりはしていない。「少しぐらい愛嬌を振りまいてもいいんじゃない?」と(特にアダージョでは)言いたくなるような素っ気ない演奏だが、最初から最後まで真摯なのは好感が持てる。ベートーヴェンのボックスに収録されている55年録音の7番からも明らかではあったが、この人は既にこの頃から俗世を拒絶したような演奏を行っていたのだ。(私生活は正反対だったようだが・・・・・)聴いていないけれども、たぶん当盤以前の録音もそうなのだろう。この辺りは、4番フィルハーモニア盤ページに書いたようにヴァントとの類似性を感じさせる。そこで引いた某掲示板の投稿「ケルンを振ったときのクレと、ケルンを振っていたときのヴァントはかなり似てますよ」であるが、当盤はテンポこそヴァント盤より速いものの(終楽章の中間がせっかちになるのが唯一惜しまれる)確かに厳しいところはソックリである。インタビューから窺い知れるヴァントも結構生臭いところがある。そういう人間だからこそ、世俗臭のないブルックナーの音楽に憧れるとともに、孤高の境地を感じさせるような演奏を実現できるのかもしれない。
 最後に音質だが、残響がほとんどなくデッドではあるもののモノラル録音としては上質の部類に入る。それから余談だが、当盤はイタリア製造で、演奏会が行われた地名は"Colonia"と書かれている。(ただし、オケ名は"Koeln Radio Symphony Orchestra" と英語風である。なお、実際にはoウムラウトが使われているが文字化けするので、ここでは"oe"と表記した。)西語でもケルンは"Colonia"と書く。つまりコロニーである。「移住地」「植民地」だった、という理解でいいのだろうか? ついでに書くと、経営者がドイツ系であるためか、パラグアイのビールの銘柄には「ブレーメン」「ムニチ」「バビエラ」のようにドイツの地名を使ったものがいくつかあった。

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