交響曲第7番ホ長調
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団
60/11/01〜05
EMI CE28-5155

 クレンペラーのブルックナーを買ったのは、渋谷のレコファンで見つけた479番の中古が最初だった。(これらがダブってしまうのを懸念したため、目次に書いたようにオークションへの入札をためらうことになった。)当盤のブックレットによると、これは「スーパー・セレクション・2800」というシリーズの第3回発売(88年)ということだが、痩せた音であまり冴えない。(あるいはART盤なら印象はガラッと変わるかも、と思ったが、あるクラシック総合サイトのオーナーは「しかしこの録音は、新リマスター技術をもってしても、オケの音色・質感がブルックナーにはふさわしいものにはなっていない。」とコメントしている。)ただし、既に書いた通りこの曲ではそれが致命的にはならない。
 当盤はフィルハーモニア管とのステレオ録音では最初のものであり、(当然ながら最晩年の異様なほどノロいテンポを採用する前なので)まだ基本テンポは速い。また、中途でのテンポの揺さぶりは採用せず、曲想が変わらない限りはインテンポを守っている。例えば第1楽章4分19秒からのハ長調の部分も次第に加速したりしない。音質のせいもあって、まるで晩年の枯れた演奏とも聴こえる。(マタチッチのスロヴェニア盤と似ているような気もする。)ところが、その一方で8分21秒のチェロの旋律の直前には間を置かず、リズムが前のめりになっているようにも聴こえる。これは独特であるが、こういうやり方には若々しさを感じてしまう。どうもよく解らないが、指揮者は休止やテンポの変更を控えることによって、音楽の流れを大切にしようとしたのではないかと思う。 第2楽章も基本的には淡々と進む。クライマックス直前は少し腰を落とすものの、シンバルが鳴ってからはサッサと先に進んでしまうというように、部分的に遅くはなっても決して粘らない。第3楽章もやはり速め。ところが終楽章の冒頭が悠然としたテンポで始まるのはちょっと驚いた。その直後はしばらく早足で進むのだが、3分39秒ではかなり大きくテンポを落とす。こういうことの繰り返しで、何だか今までやる気が出なかったのに急に張り切り出した、というようにも聴こえてしまう。エンディングもしっかりタメを作っている。この楽章だけ異質という印象を受けてしまった。何にせよ、それまでの快速テンポからするとトラックタイム13分39秒の演奏がかなり遅く感じるのは事実だ。
 全体としては、味付けは薄いものの(それなりの工夫をしているので)中身は決して薄くないという何だかよく解らない感想になった。このページは非常に書きにくかった。

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