交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
75/12〜76/01
SCRIBENDUM SC 003

 4番目次ページ掲載の「ブルックナー・ザ・ベスト」への投稿にもあるように、一時はクーベリックのスタジオ盤よりも下に置いていたこともあるが今では逆転している。後にいろんな演奏を知った耳には向こうはノッペリしているというか、若干精気が欠けているように感じられてきたからである。その点で当盤は申し分ない。音色の明るさや演奏の精度では互角であるから、イキイキとしている分だけポイントが高い。特に気に入ったのが金管の炸裂する部分で、第1楽章序盤(1分57秒〜や4分16秒〜など)はまだ控え目であるけれども9分30秒では九分咲き、そして10分25秒で全開となる。一本調子ではなく、こうして手順を踏んで盛り上げていくのは流石である。そして、最強奏でもバレンボイム盤やショルティ盤でのシカゴ響のように凶暴にならないのも良い。(それでもウルサイと感じる人はいるだろうが。)
 第2楽章も冒頭からしばらく淡々と進めているが、5分30秒から少しだけ味付けを濃くする。こういった実にさり気ない盛り上げ方が素晴らしい。ただしハ長調ピークの直前(12分台に入ってから)の微加速は好みが分かれるところだろう。(私のジャッジは「同時セーフ」である。)第3楽章も所々で聞かれるアッサリとコッテリの対比が見事である。終楽章も冒頭の相当なスタスタには耳を疑うが、爆発以降は適正そのもののテンポである。音楽の流れは最後まで流麗そのもので非常に快い。その理由は響きの明晰さに他ならないと私は遅まきながら思い至った。こういう演奏ではティンパニがゴロゴロと汚い音を立てない方が絶対に良い。その点ではレーグナー盤と双璧をなすようにも私は考えるが、もちろん例の最短盤(トータル58分台)のような忙しなさを感じるようなことは決してない。
 ということで、当盤も「特にこれといった欠点がない」演奏に分類されるのは間違いない。が、同タイプで私がかなり上位に置いているブロムシュテット盤、シュタイン盤、スウィトナー盤などに混じっても全く遜色ないところか頭一つ抜けているように感じる。

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