交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
72/11/25
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 この2枚組ブックレットによると、3種の録音形態が存在するようである。収録曲のうち「悲劇的序曲」(ブラームス)と「浮気心」(J・シュトラウス)は、それぞれグリューネヴァルト教会(ベルリン)とムジークフェラインザール(ウィーン)でのスタジオ録音(Recording)で、「英雄」交響曲はスメタナ・ホール(プラハ)でのライヴ(Live Recording)らしい。残る"Live Studio Recording"(いずれもミュンヘンのヘラクレスザール)というのが最初よく解らなかったが、終了後の拍手が全く聞かれないことから、どうやら観客に周知させ(&「余計な音立てるなよ」と釘を刺し)た上でのレコーディングと思われる。このブル4がそれに該当する(他はヴォルフのイタリア風セレナーデおよびラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲)。
 ここで今更ながら(=ある総合サイトの閲覧中に)気が付いたのだが、ケンペは75〜76年にかけて行われたこの曲の再録音のわずか4ヶ月後に亡くなってしまったため、スタジオ盤は最晩年の録音なのであった。(何せ65歳時のものだから十分に若々しく、枯れた演奏にはなっていないけれども「ラスト・レコーディング」であるのは確からしい。)一方、当盤は3年前の演奏であるから当然ながら死の影はまだ忍び寄っていない。とはいいながら両盤のトータルタイム差は1分ちょっと、トラックタイムを比較しても両端楽章がそれぞれ当盤(トータル64分弱)の方が30秒ほど短くなっているに過ぎない。よって基本的解釈はほぼ同じといえる。そうなると、微妙な差が勝敗を決すると思われたのだが・・・・実際には当盤の圧勝となった。第1楽章1分56秒以降の全奏を聴けば明らかである。ブルックナー・リズムによる掛け合いが、ともに「ドーッソーッファッミッレッド」「ドーッミーッソッラッシッドー」と弾んでいるように聞こえる。改めてスタジオ盤を聴くと、そちらでも同じようにやっているのは確認できたが、より顕著なのは当盤である。客を脅していたとはいえライヴには違いないから、その分だけノリが良かったのかもしれない。躍動感だけでなく、しなやかさも上回っているという印象を受けた。もっとも当盤の録音が極めて優秀であり、生々しさが伝わってくることも好感度をもたらす大きな要因となっていると思われる。(スタジオ録音の方も決して悪くないが、やや音が遠くて硬い感じだ。)10分07秒以降(スタジオ盤ページで「全開」と述べたコラール部分)では輝かしさと格調高さを見事なまでに両立されており、思わず溜息が出てしまった。他の楽章についても当盤が少なくとも10対9程度にはポイント差を付けている。いちいち具体的に挙げる必要もなかろう。と手抜きして終わるつもりだったが1つだけ。終楽章開始から最初の爆発までがスタジオ盤では1分10秒なのに対し当盤では1分13秒。たった3秒だが、これが決して無視できない違いを生んでいる。冒頭からの若干遅いテンポに直前の微減速が加担し、巨大なるスケール感を備えたピークが形成されるのである。

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