交響曲第8番ハ短調
ヘルベルト・ケーゲル指揮ライプツィヒ放送交響楽団
75/03/11
ODE ODCL-1020(セット)

 スタジオ録音盤のページに書いたが、当盤の方がバランスが良く、レンジにも余裕がある。そのため、ややおとなしいと感じられてしまうが、それはあくまでPILZ盤と比べてのことであり、十分に激しい演奏である。臨場感にも不足していない。(ただし3番ODE盤ページ下にあるように、会場ノイズがほとんどないこともあって、終演後の拍手を聞くまではライヴであることを忘れてしまうほどである。)
 ここは第1楽章8分過ぎの盛り上がりを両盤で比較してみることにする。スタジオ盤はとにかくティンパニが前面に出てくるために真っ先に感じるのは激しさである。一方、当盤はパート間のバランスの良い録音のお陰で弦もよく聞こえるが、そのお陰で全ての楽器による美しい響きが堪能できる。テンポもほんの少しだが即興的に動かしており、しなやかさが感じられる。「剛か柔か」ということになると、どちらも「剛」なのであるが、わずかに違うのは温度かもしれない。スタジオ盤は火傷をしそうに熱いのだが、このライヴではあくまで客観性を失わない指揮者がいる。「ライブの方が爆演」というのは西側での常識に過ぎないのであって、当局の監視下での演奏会では「やりたい放題」などあり得なかったのかもしれない。あるいは単なる録音の魔術という可能性もあるので、この辺にする。
 東側で出回っていたというハース版を基本的に使用しているが、最後の最後でドンデン返しがある。クナやカラヤン57年盤と同じく、ティンパニを(トレモロではなくて)「ミレド」に合わせて「ダンダンダン」と鳴らすのである。普段抑圧されていた鬱憤をここで晴らそうとしたのか?(←考えすぎだって)

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