交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ヘルベルト・ケーゲル指揮ライプツィヒ放送交響楽団
60/11/11
WEITBLICK SSS0031-2

 71年盤ページの追記として書いたように、2005年5月にhmv.co.jpの特価セールにて当盤を購入。「インターネット税込価格¥2,729」というのは少々怪しいが、「キャンペーン税込価格:¥1,017」を見たら出来心でつい手を出してしまうのが人情(?)というものだろう。
 さて、既所有の4番ライヴ2種(ODE)に新たに当盤が加わった訳だが、ネット評はこのスタジオ録音が最も高いようである。当サイトのクナのページで何度も引用させていただいたS氏などは、「ケーゲルの表現が徹底しており、最も聞き応えがあった」「ブルックナー:交響曲第4番の規範を聞かされているような優れた演奏録音」とまで述べておられる。そこで期待を抱きつつ聴いてみたところ、予想をはるかに上回る素晴らしい出来映えだった。第1楽章冒頭から気合いの入り方が尋常ではない。そのため、基本テンポは決して遅くはないにもかかわらず、リズムに重々しさを感じてしまう。しかも全く緩んだところがない。やっぱりこの指揮者は録音で萌える、いや燃えるタイプだったのだ。その点ではもう1人のヘルベルトと通ずるものがあるかもしれない。メンバーにも飛び火しているのは明らかだ。再現部以降は提示部よりも温度が上がるだけでなく表現も濃厚になっている。第2楽章では呼吸の深さに感嘆してしまった。これまた何という重苦しい足取り! 同年4月のライヴをはるかに凌いでいるし、ハ長調のクライマックスを徹底的にネットリやる点も異なっている。しかし、この楽章の最大の聞き物はその後(16分45秒〜)にやって来る。ティンパニのトレモロに続く旋律の怖さはどうだろう。許光俊が絶賛していたアルビノーニのアダージョが霞んでしまうほど救いようのない暗い音楽ではないか。第3楽章は再び熱い音楽であるが、前楽章の後ではヤケクソのようにも聞こえる(特にラストの締め括り方)。終楽章も全力投球。トラックタイムの似ている71年ステレオライヴと少し聴き比べたところ、伸びやかで時に歌うようなところもあった新盤に対し、当盤の表現の方が断然厳しい。特に短調でスローテンポになる箇所。9分44秒以降など完全に葬送行進曲で、ありふれた言い方だがマーラーを思わせる。かと思わせておいて11分からは金管の切り裂き攻撃。全く油断も隙もない。(やはり時代を反映している、というのは考えすぎで、これは芸風の変化と考えるべきだろう。そういえば当盤では改訂版からの採用は全くない。)
 私としては音質良好で演奏にも余裕が感じられる71年盤を3種中のベストに推したいが、ケーゲルらしさという点ではS氏に倣って当盤が随一であるとしておく。ただし、ネット通販の宣伝文にある「60年モノラルですが、音質は実に良好です」には疑問。音の深さは同年ライヴより上だがノイズはこちらの方が圧倒的に多い。ヘッドフォンで聴くと音割れも結構耳障りだ。これが良好なステレオ録音だったら凄かっただろうな。特に変わったことをやらなくとも終楽章コーダのザワザワがあそこまで神秘的に聞こえる演奏というのはそうザラにあるものではないのだから。

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