交響曲第7番ホ長調
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
70/10/19, 71/02/03〜04
EMI TOCE-3478

 4番70年盤では演奏そのものについて何も書かなかったので、ここでは少し書くことにしたい。ただし、その前に両盤(TOCE-3477と78)の帯のコメントが同じであることは触れておかなくてはならない。71年のレコード・アカデミー賞を取ったのは一体どちらなのか? それとも両方なのか? 確か4番の方ではなかったかという気がするのだが、もし7番の帯を間違えて4番と同じにしてしまったのだとしたら恥さらしもいいところである。
 この7番も4番と同様に後のDG盤よりも遅く、こちらの方が堂々とした風格を持った晩年の演奏に聞こえる。4番の場合は70年盤と75年盤のトータルタイム差が約6分あるが、7番の71年盤は75年盤より3分半ほど短いだけである。にもかかわらず、音質のせいで相当遅く感じられる。その音質についてコメントすると、HS-2088以前のマスタリングを知らないので、これが改良か改悪かは判らないものの、とにかくむさ苦しく感じられるのは確かである(特に遅い第2楽章)。私が密かに「熱帯夜録音」と呼んでいるように、不快指数は極めて高い。もし当盤が75年盤のようなテンポの速いアッサリ演奏ならば、「蒸し蒸し感」も少しは中和されたかもしれないが、これでは救いようがない。逆にスッキリ演奏の75年盤が「熱帯夜録音」ならば濃厚さが加わっていたかもしれない。しかし、そうならなかったために特徴の全く異なる2種の録音が残されたことだけは確かである。はたして良かったのか悪かったのか?

2004年7月追記
 某掲示板にて、artマスタリングによるオランダ盤では第4楽章の第2主題の一節に欠落があるという投稿があった。このレーベルが腐っているのは日本だけに限ったことではないのかもしれない。

2006年4月追記
 2004年10月14日から発売されている「EMI決定盤1300」シリーズは、この札付き国内レーベルとしては例外的に音が良いらしい。某掲示板でも「何もしないリマスタリング」は大成功だったという賛辞が送られていた。ところがである。先日同所で以下のような書き込みを見て仰天した。2006年3月23日リリースのカラヤン&BPOによるブル47番(TOCE13281、TOCE13282)に関する質問である。

 EMI国内盤「決定盤1300」のカラヤン/BPOの第4番と第7番。
 今までこの演奏を聴いたことがなかったので買ってみた。

 第4番の第1楽章233−236小節(展開部・第1主題第1句の展開の途中、8′20″付近)が2回ある。
 第7番の第4楽章35−38小節(提示部・第2主題の提示の冒頭、1′05″付近)がない。

 もともとこういう演奏なのか、この盤の仕様なのか。
 異盤を持っている人、上記箇所がどうなってるか教えてください。

うち4番については向こうのページでも指摘している編集ミスであるが、7番の欠落については迂闊なことに全く気が付いていなかった。その2時間後に付いたレスがこれ↓

 恵美のブル7の編集ミス=第4楽章楽譜上での欠落箇所35〜38小節。
 KARAJAN EDITION art盤1'07
 第2主題が最初に提示されるところで、弦により4小節の同じフレーズが調
 と強弱を変えて2回繰り返されるが、その1度目が抜けている。
 CDではSTUDIOシリーズのみ修正されている。
 LPで修正盤が出たのは英独盤で、日本では欠落盤を発売し続けていた。

一昨年7月追記分について私は「対岸の火事」(あくまで輸入盤のみ)と認識していたのであるが、国内盤にも飛び火していたとは! 大慌てで帰宅後に再生したところ、確かに他盤には存在するフレーズ数秒間がスッポリと抜け落ちている。改めて制作者の怠慢ぶりに呆れてしまった。怒りを通り越して「よくそれで給料もらってるなあ」と一種の羨望すら抱いてしまうほどだ。自分の鈍さを棚に上げて言うのも何だが、杜撰な仕事を何年も放置していられる無神経さから察するに、きっと美的感覚というものが完全に破壊されてしまっているのだろう。頼むから芸術を扱う仕事にはこれ以上タッチしないでもらいたい。何にせよ当盤も「準論外(買ってはいけない)盤」に指定させてもらう。

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