交響曲第9番ニ短調
オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
78/01/13〜16
EMI 5-73905-2(全集)

 この演奏に限らず、ヨッフムの9番にはどうにも許し難い点があるいくつかある。その最たるものが第1楽章の「インフレーション」から「ビッグバン」までに間(当盤では2分21秒頃)を入れることである。(他に間を置く指揮者もいないわけではないが、これほどハッキリと空けるのは彼だけである。)宇宙膨張(インフレーション)は加速度的に進行し、そのままの勢いで灼熱状態(ビッグバン)に突入したのである。 決してあんな風にインターバルが入ったのではない。あれでは「潅水している時に折れ曲がっていたホースが真っ直ぐになった次の瞬間、一時的に止まっていた水が勢いよく噴き出す」程度のインパクトしかない。(他に私がイメージするのは田植機のトラブルである。我が家の田植機は土壌深層への施肥も同時にできるタイプであるが、肥料の出るノズルが潜ったままで迂闊に後退すると泥が詰まってしまう。そうなると針金などで突っついて掃除をしなければならないが、泥が取り除かれた次の瞬間にペースト状の肥料を顔面で受け止めることになる。そういうことが過去何度もあった。眼鏡をかけていなかったら塩類の塊である肥料が目に入って大変なことになるところだ。)
 が、そこで間が入らなかったとしても、テンポ揺さぶりの頻発するこの1楽章の演奏を聴くのは私には辛すぎる。私が抱く(思い込む)この曲に対するイメージとはあまりにもかけ離れているから。同楽章コーダの「ダダーンダダーン・・・・・」が聞こえないし、そこから早足になるのもペケである。(ま、要は嫌いということだ。)また、22分30秒では低音の金管(トロンボーン&チューバ?)が一拍早く飛び出しているように聞こえる箇所もある(BPO77年盤も同じ)。 スクロヴァチェフスキほど露骨ではないが、このフライングには結構驚かされる。さらにその直後、リズムが前のめりでアンサンブルが崩壊して聞こえる所もある。(こちらはBPO盤64年とも同じ)。なんでこんなヘンな解釈ばっかりしているのだろう、と不思議に思わずにはいられない。
 2楽章と終楽章はそんなに悪くない。特に終楽章はムチャな急加速もなく、単独では立派な演奏と評価できるが、1楽章とのトラックタイム差が4分半というのはあまりにもバランス感覚を欠いていると言わざるを得ない(チェリ&MPO86年盤参照)。1楽章と終楽章は全く別人が指揮しているようだ。
 何より驚くのは、BPO盤(64年)と演奏時間がほとんど同じことである。「この14年間、何も学ばなかったのか!」と言いたいくらいだ。(←なんちゅう暴言)

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