交響曲第8番ハ短調
オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
76/11/03〜07
EMI 5-73905-2(全集)

 ろくに聴きもせず、ヨッフムに対して「面白味のない」「凡庸な」指揮者という先入観を持っていたので(←アホである)、彼のブルックナーのディスクを買おうという気にはなかなかならなかったが、ある日名古屋に出張した際、この8番と9番の2枚組(Double forte シリーズ)を中古屋で見つけたため購入した。確か1000円だった。が、演奏は8番も9番も気に入らなかった。
 そもそも3〜7番まではマイナスにならなかった、どころかプラスに作用することもあった明るい音色がこの曲には不向きであるような気がする(9番も同様)。7番で書いた「軽快」が、ここでは「軽薄」になってしまっている。第1楽章7分10秒頃から1分かけての盛り上がりはBPO番よりもおとなしいが、勝手なもので中途半端(インテンポで堂々とやるか、テンポを動かすならもっと激しくやってくれ)と思ってしまう。
 ということで、当盤にはあまりコメントしたくないのだが、特筆すべきことがあるので書いておく。それは第1楽章終盤のカタストロフ(11分57秒〜)でのトランペットの鳴りっぷりである。とにかく凄い。即座に「号泣しているようだ」と思った。それまで抑え気味にしておいて、あそこで思いっ切り吹かせるのである。何たる悪趣味! 歌劇「アイーダ」の有名な大行進曲の演奏風景をふと思い出した。例の特製楽器(アイーダ・トランペット)を持った奏者が、あそこでいきなり立ち上がって一斉に吹いたら聴覚的にも視覚的にも効果抜群であろう。(もともとあそこはヴェルディ風ではある。)こんなことを考えてワクワクしてしまう私も十分に悪趣味といえるが、もしかして本当にそんな風に演奏していたりして。(んな訳ないか・・・・・・)
 なお、最初に買った2枚組は全集購入後に手放してしまった。聴き比べてみたら、artマスタリングによる全集盤の方がかなり音が良いと思ったからである。ただし、例の悲痛な叫び(「ミゼレーレ」という言葉がピッタリ)は後退してしまった感があり、ちょっぴり後悔しているところである。

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