交響曲第8番ハ短調
オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
64/01
Deutsche Grammophon 469 810-2(全集)

 ネット上を捜しても当盤への評価はほとんど見つからないが、8番専門サイトの作成者がコメントを載せている。彼は「せかせか」を3度も使っているが、私もその一言に尽きると思う。第1&2楽章が14分を切るというのはそんなに珍しいことではない。また、確かに速いけれども「あざとい」と思われるような解釈は少ない。7番BPO盤のページにも書いたが、常任ではないBPOとの共演のせいかもしれない。クセのない録音も幸いしているように思う。(レコーディング・スタッフの名は一切記されていないが、「カラヤン臭」のないインターナショナルな音質である。)  問題は後半の2つの楽章、というより第4楽章である。19分35秒というのは極めて異例である。20分割れの演奏は他にクレンペラー&フィルハーモニア管盤があるが、あれは仰天の大量カットがあるという話だし(未聴)、シューリヒト&VPO盤(やはりカットあり)も第3楽章も速いので楽章間のバランスという点では問題は少ない。しかし、当盤は第3楽章が26分台であるからメチャメチャ早く感じる。後半2楽章のトラック・タイム差は7分近い。(後のSKD盤もそうである。例外なく2分以内だったカラヤンとは対照的である。こんなに差があるのは他にいないのではないか、と思っていたらメータ&イスラエル・フィルの1987年ライヴ(DVD)では8分以上もあるようだ。「聴く方が悪い」とまで言われている指揮者であるが、さてどうしようか。 )さて、猪突猛進あるいは勢いだけというべき終楽章だが、冒頭の大音響ではあまり気にならなかったものの、少し静かになってから(55秒以降)はリズムが甘く、弦の刻みと管楽器の旋律が合っていないところが耳に付いて仕方がなかった。「天下のBPOを振ってこの程度かい」と嫌味の一つも言いたい位である。(←なんちゅう不遜な)
 他でも書いているように、ヨッフムのブルックナー解釈は他の指揮者とはかなり違っているように私は思っているが、それは彼独特の時間の感じ方が原因ではないかという気がする。大きく盛り上がる前には必ずといっていいほど急加速するし、9番の1楽章や4番の冒頭では露骨な間を取る。それが時に私には「ヘンな解釈」と感じられてしまう。9番SKD盤ページに書いた「フライング」もそうであり、「ヘン」という点ではスクロヴァチェフスキと同じである。ただし、緻密な音楽づくりが特徴のミスターKとは異なり、ヨッフムの演奏はいかにも乱暴なので、曲によっては(特に8番と9番)アラが目に付いて感動どころではなくなってしまう。ということで「ヨッフムとは、へたなスクロヴァチェフスキという意味だ」という極めて乱暴な結論(「ただしSKDの全集まで」という限定付き)でこのページを締める。

8番のページ   ヨッフムのページ