交響曲第7番ホ長調
オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
86/09/17
The Bells of Saint Florian AB-15

 ネットオークションで出品されていたのを見ても最初は食指が動かなかった。(最初に買ったSKDとの89番、続いて購入した全集とも満足できなかったので。)けれども、「昭和女子大学人見記念講堂で行われたヨッフム最後の来日公演における超名演のCD化」という情報をどこかで入手したため急遽入札に踏み切り、めでたく落札した。(確か1300円だった。)
 5番のACO86年盤と同じく、チェリビダッケに匹敵する遅さであるが、弛緩したところがないので聴いていてもダレない。(あら探しのために)よーく聴くとテンポを小刻みに動かしていることが判るのだが、音楽に浸っていると作為は感じさせない。見事である。第1楽章コーダはテンポを速くも遅くもせず、インテンポで押し切っている。遅いことは遅いけれども、この楽章の基本テンポを踏襲しているのだから良いのだ。(そこだけ遅くするのはダメ指揮者のすることである。)こういう演奏をこそ私は望んでいたのだ。私がヨッフムの実力を認めたのは、紛れもなくこのディスクを聴いてからである。
 第1楽章冒頭でチェロが第1主題を弾いた後、24小節目の3拍目でホルンが鳴る。「フライング・ホルン」と呼ばれることもあるらしいが、これは改訂版のアイデアで、ヨッフムは64年BPO盤で採用し、76年SKD盤では採用していない。なにゆえに最晩年に改訂版に戻ったのかは金子建志も述べているように謎だが、当盤ではホルンが64年盤よりもハッキリと聞こえるため、結構効果も十分あると感じる。さらに謎なのが第2楽章のクライマックス(22分20秒)で、ティンパニとトライアングルは派手に鳴るもののシンバルが聞こえない。これもインバルやブロムシュテットが採用しているような「折衷案」の一種だろうか? だとしてもシンバルのみ不使用というのは他に知らない。とはいえ、これは耳にとても新鮮で効果抜群である。(ひょっとすると鳴ってはいても聞こえないだけなのだろうか? 「新世界」終楽章のシンバルの場合、非常に控え目に叩かせている指揮者のディスクでは、かなり注意深く耳を傾けないとクラッシュ音は聴き取れないが、それと同じだろうか?)
 8番バンベルク響盤とは逆に、このディスクには「随伴現象」が入っていると思う。少々デッド気味の録音(←ホールの音響特性?)だが、ライヴの雰囲気に浸ることができるからである。FM放送エアチェックという説が一部にあるが、ヒスノイズもなく音質は極めて良好である。「NHK所有のテープを用いたAltus盤より劣る」というコメントが出ているが、私はこの「鐘」盤で十分満足している。正規盤2枚組は値下げによって1枚分の価格で発売されているが、上記8番バンベルク響盤と同じくガッカリさせられるのが嫌だし、モーツァルトの33番に興味がないこともあって手を出す気にはなれない。

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