交響曲第5番変ロ長調
オイゲン・ヨッフム指揮フランス国立管弦楽団
69/10/22
PECO SSCD-002

 あるクラシックの総合サイトには、この5番に対する「フランスのオケにこれだけしっかりとしたブルックナーを演奏させてしまうのはさすがだ」という評価が載っている(同コンビによる7番についても同じ)。私も特に理由がある訳でもないのに「フランスオケのブルックナー?」などと色物扱いをしていたようなところがあり、当盤(&7番)を購入するまではエッシェンバッハ&パリ管による4番しか持っていなかった。このセットに収録されている5番および7番の出来映えは、このような偏見を木っ端微塵に打ち砕くに十分である。
 当盤でまず印象的なのは、第1楽章2分30秒からのファンファーレ(ソードーレミーラ♭ーソー)の音色の明るさである。ティンパニが全面に出てこないのが原因で、その反面、弦の刻みは非常に明瞭に聴き取れる。(例えばヴァント&BPO盤とは対照的で、彼はここでは要所でティンパニを強打させることによって押し寄せる波のような効果を出している。)それは録音バランスのせいではない。2分50秒頃から次第に盛り上げるとともにティンパニも大きくなるからである。とにかく、ヨッフムの他の5番演奏からは決して聴かれない特異な響きであるが、これは序奏に留まらず第1主題提示部に入ってからも続く。3分49秒からの第1主題では、やはりティンパニが抑制気味で弦と金管が主体であるが、フレーズの終わりでは向かって右側の弦楽器(ヴィオラ?)が刻み続けるのがやたらと耳に付く。ここの奇抜さはチェリの4番のエンディングに匹敵するのではないだろうか? ただし耳障りではない。これがフランスオケ特有の響きというものなのであろうか? 「ネチっこいけどサラサラしてる」、矛盾してるがそんな感じだ。 何にせよ非常に流麗である。同楽章コーダから駆け足になるのはACO64年盤と同じで少々興醒めであるが、ここでも弦と金管中心の明るい音色なので、この程度ならば「軽快」という肯定的な受け止め方もできる(重い響きで早足というのは最悪)。ところが、そのまますんなりとは終わらない。最後の「ジャン」の直前だけティンパニが強打される。ヨッフムはなぜこの演奏だけこのようなやり方を採ったのだろうか? (よく似ているのがレーグナーで、彼は4番でも同じことをやっている。ひょっとしてこの演奏を参考にしたのだろうか?)
 中間楽章はすっ飛ばしてフィナーレについてコメントする。とは言っても、第1楽章を聴いての印象と大きく異なっているわけではない。6分20秒頃から加速するところでは少々アンサンブルが乱れるが、他に気になるような部分はなく、(いちいち他の演奏と聴き比べるということはしなかったが、)ヨッフムにしては以外に「まとも」な演奏を繰り広げていると思う。当盤で特筆すべきことはコーダの弦管打楽器パートのバランスが非常に良いことで、そのためファンファーレは金管全開でも全くうるさくなく、むしろ聴いていて非常に気分爽快であった。エンディングがまたしてもティンパニが控え目だったので、たぶん1楽章と同じやり方で決めるのだろうと思ったが見事に肩すかしを喰らった。最後の最後が合ってないが大きな傷ではない。(ただしテープには傷がある。)
 なお、演奏終了後の熱狂的な拍手やブラヴォーに混じってブーイングが結構聞こえる。一部のパリジャンはこれほどの名演でも素直に賞賛するのが嫌だったのだろうか? ヒネクレ共めが!

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