交響曲第5番変ロ長調
オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送交響楽団
58/02/08〜15
Deutsche Grammophon 469 810-2(全集)

 向こうのページで問題提起していたが、当盤の劇的スタイルは80年SKD盤までとは共通していたものの、予想通り最後の録音となった86年ACO盤とは明らかに一線を画するものであった。よって、HMVインターネット部の坂本光晴による「解釈そのものは実質的にはほとんど変わっていない」は、あくまで当58年BRSO盤から80年SKD盤までにしか当てはまらないことが明らかとなった。(まあ唯一2枚組の86年盤では、それまでと打って変わって堂々とした巨匠的スタイルへと変貌しているのだから当然といえば当然だが。)ならば58年盤から80年盤までならどれを買っても構わないということになるかもしれないが、単品なら最近初リリースされた当盤が最も入手しやすく、お買い得でもある。(廉価発売されていた64年盤は通販サイトではいつの間にか「在庫切れ」になっていたし、新全集に収録されている80年の演奏も1枚ものはかなり前から廃盤だったはず。)ただし、1点だけ所有するなら先述した突然変異盤だろう。(私が最上位に置いている69年盤はかなり入手困難である。)こちらも輸入盤が復刻された模様だから再度廃盤扱いになる前に入手された方が良かろう。
 さて、既に述べたように当盤は例によって激しいところは激しく、しっとりしたところはしっとりというヨッフム様式である。だから、わかりやすい。(既に他盤をお持ちなら「ここでこうやるだろう」と先読みできるはずだ。)ステレオとしては最も早い時期の録音(ハンブルク・フィルとの38年録音があるらしい)だけに歯切れの良さは感じられるけれども、意外にも落ち着いているとも聞こえる。やはりライヴの64&69年盤に対してスタジオ収録ということが大きいだろうし、80年盤との印象の違いは他の曲と同じくオケの音色が原因だろう。ただし、この曲に限ってはケバケバの新全集録音を採りたい。それにしてもBRSOの上手さは特筆もの(録り直しのお陰もあるか?)で、中でも金管パートの充実ぶりは5種録音中で随一かもしれない。(64年盤や69年盤は時にもたついているように聞こえる。)響きも大変美しいが、演奏会場の残響に助けられてということもない、つまり自力だから立派である。
 他に耳を引いたのが第1楽章ラストのティンパニで、69年盤同様のケレンを聞かせている。つまり、ある解釈を気分次第で採用したり採用しなかったりしていた訳で(58年→採用、64年→不採用、69年→採用、80年→不採用、86年→不採用)、ヨッフムが「即興型」指揮者だったことを見事なまでに示している。その日の思いつきを本番でやってしまう指揮者を私はかつて「へたなヨッフム」(現在は「へたなシューリヒト」)と位置づけていたが、そういう扱いが決して不当ではなかったことが証明されて良かった良かった。(途中で行き詰まってしまったため最後はこんな展開になってしまった。某指揮者のファンよ許せ。)

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