交響曲第5番変ロ長調
オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
86/12/04
KING International (Tahra) KKCC-4277 (TAH 247)

 当盤はネット上で非常に評価が高かったため、ブルックナーのディスクを集め始めた比較的初期に入手した。大学生協のネット販売では廃盤扱いだったので通販サイトを当たってみたところ、amazon.co.jpでのみ売っていた。私が購入後間もなく「在庫切れ」になってしまったから、運が良かったと言えるだろう。演奏は7番86年盤以上に堂々としており、まさに「巨匠の至芸」である。こういうのを分析して文字にしようとしても無駄である。で終わってしまったら無責任と言われても仕方がないが、実は坂本光晴(HMVインターネット部)による詳細な解説があまりにも見事なので、細かいことをゴチャゴチャ書く気が失せてしまったのである。
 ただし、58年のDG盤(バイエルン放送響)と86年の当盤とを比較して、「30年近い開きがあるにもかかわらず、ヨッフムの解釈そのものは実質的にはほとんど変わっていない」と書いているのには異論がある。劇性が特徴であった以前の64年ACO盤やSKD盤が時に暴走気味と感じられたのに対し、当盤では例えば第1楽章冒頭3分20秒頃までのように、遅めに設定した基本テンポを守ることによって比類なきスケールの大きさを実現しているからである。(それとも58年盤は例外的に落ち着きの感じられる演奏だったのだろうか? 聴いてみんことには何とも言えんな。)第1楽章の2分25秒〜や16分10秒〜など、ピークの少し前ではお決まりだった急加速もやらず、ヴァントばりのインテンポで押し切っている。コーダはやや速くなるものの、セカセカテンポではないため落ち着きは保たれている。金管がヒステリックに咆哮するということもなく、響きは全体として非常に充実していると感じる。それが最も功を奏しているのは終楽章。最後の3分間は誇張なしに「至福のひととき」であるといえる。

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