交響曲第5番変ロ長調
オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
64/03/31
PHILIPS UCCP-9063

 私は「レコード芸術」編「名曲名盤300」の93年版と98年版を持っているが、いずれも当盤とSKD盤とが票を分け合っている。そういう場合は上位に食い込めないのが常としたものであるが、ヨッフムの5番は両盤ともトップあるいはそれに近い座を占めている。5人の評者が少なくともどちらかに点数(それも高得点)を入れているからなのだが、それだけ定評があるということなのだろう。大したものである。(86年ACO盤も加わって、3種による足の引っ張り合いになればどうなるかはわからないが、最新結果を私は知らない。)
 96kHz-24BITの威力なのかは判らないが、とにかく音がいい。SKD盤はケバい音色に不自然さを感じてしまうが、当盤はとてもライヴとは思えないほど音がよいので、却って不自然に思ってしまう。もちろんこちらは喜ばしいことであるが。鮮明な音質で左右の分離も抜群であるため、録音の古さは全く感じさせない。パートの分離も良好で、ソロ部分はもちろん、トゥッティに近い状況でも各楽器の音が明瞭に聴き分けられる。オットーボイレン教会での収録ということで残響もタップリ入っているが、ヴァントのリューベック盤のように長すぎで音が重なり合うということはなく、「ええ塩梅」と感じる。SKD盤のページでも触れたが、当盤の方が音が地味なので演奏まで落ち着いているように聞こえる。とはいえ、所々でセカセカと走り出してしまうのはBPO盤やSKD盤と同じで、特に1楽章コーダ(19分24秒〜)の別テンポ採用は興醒めであった。(加速という点では終楽章のコーダ直前が最も顕著であるが、フルトヴェングラー盤を聴いて少し免疫ができたようである。)60年代のヨッフムの芸風ではこうする以外になかったのだろうが、巨大スケールの86年盤を知ってしまった耳にはさすがに聴き劣りする。

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