交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
75/12/07
EMI 5-73905-2(全集)

 2004年6月に「決定盤1300」という廉価盤が再発されたようだ。(24bit REMASTERINGで音質向上しているかもしれないが国内盤は絶対買わん。HS-2088を所有していたのならもしかして食指が動いたのかもしれないが、激安全集の音質に不満はない。)CDジャーナル誌付録の小冊子によると「レコード・アカデミー賞」とある。(知らなかった。)宣伝文の「全集の中でも最も評価の高かった演奏」という言葉に偽りはない。しかし、「作為というものが一切なく、だからブルックナーの祈りにも似た真摯なサウンドがストレートに伝わってくる」には疑問を感じるというより大嘘だと思う。(「真摯なサウンド」は明らかにおかしな表現だと思うが、cupiDのデータベースでは「作為の感じられない自然な佇まいが、ブルックナーの祈りにも似た音楽とよく合う」とあった。)「クラシック名盤&裏名盤ガイド」でこの演奏を推薦している吉田真のコメント「ただし、シンバルやティンパニーの追加をはじめ、劇的な表現にあふれた『異色』の演奏である」の方が絶対に正しい。
 この演奏ではテンポの急変が多く、時には予期しないところでの意味不明の加速も見られる。例えば第1楽章の3分40秒頃や4分10秒頃、次の第2楽章(←楽章単位で見ると16分台は「やや遅め」に分類されるかもしれないが、前楽章とのバランスを考えたらかなり遅め)は堂々とした歩みで進められるけれども、ここでもハ長調のクライマックスに向かって14分過ぎからテンポを上げていく。これは異例だと思う。スケルツォ主部もホルンが主題を吹く直前に少しずつテンポを上げている。このように挙げていったらキリがない。 ショルティがおとなしいと感じられるほどの「暴れん坊」ぶりである。
 また、吉田が述べたような打楽器の追加も忘れてはならない。第1楽章中間部のコラールにはティンパニが入り、終楽章冒頭でもシンバルが炸裂する。これはカラヤン75年盤と同じく改訂版採用である。(ただし、終楽章後半のティンパニは採用していない。)テンポの変化の頻度と激しさを考慮すれば、劇性はカラヤンをはるかに凌駕しているといえる。ところが、カラヤンが「人工的」とか「素朴さに欠ける」などと批判される一方で、ヨッフムが同じことをやっても「作為がない」「本質を逸脱していない」と褒められる。因果なものである。
 なお、EMIに対抗してDGからもBPOとの国内廉価盤(こちらは1200円)が再発された。こちらも「バイエルン放送響も交えた第1回目の全集中、最も充実した演奏として評価が高いもの」で、「ヨッフムの代表的録音である『ブルックナー:宗教曲集』に通じる、深い敬虔さを持った美しい響きに満ちている」ということだが、「テンポが寸詰まり」というネット評を見たので購入の予定はない。(ただし、旧盤と新盤の演奏時間はそんなに違いはなく、中間楽章はほとんど同じ。)

追記:上記「決定盤1300」シリーズ発売直後から、某巨大掲示板のクレンペラースレッドにて劣悪音質に対するリスナーの不満が噴出している。何たることか、マスタリング担当はあのO崎らしい。絶対に買ってはいけない!

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