交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送交響楽団
67/01/18
Deutsche Grammophon 469 810-2(全集)

 バイエルン放送響にせよベルリン・フィルにせよ、旧全集の音色は新全集よりはるかに落ち着いているけれども、ヨッフムの芸風自体が十分派手なのだから音楽に浸るにはこの位でちょうどいい。目次ページ追記で紹介した「ひんやりと湿った感触のある」という当盤評だが、確かに「ひんやり」はその通りだし、カサカサしたSKDよりは音色に潤いがある。この3番は第1楽章で何度も劇的に盛り上がるのだが、裸電球のようにケバい響きのSKD番よりも耳当たりがはるかに優しいのは何といってもありがたい。当盤でも中間部ピークが「マイ・ワースト処理」なのが惜しまれるが、その後がセルやスクロヴァのように神経質にならない分救いがある。再現部の盛り上がりが収まってからのしみじみとした味わいは驚いたことに旧盤以上である。第2楽章も同様。他の曲もそうなのだが、ヨッフムの暴れ回るスタイルはこの時点ではまだ控え目であり、SKD時代の70年代後半になって完成したのだと思う。ところが第3楽章を比較すると、スケルツォ主題に細かい表情づけを行っている新盤に対し、当盤ではほとんど一本調子であるからよく分からない。ところで今更ながら気が付いたことだが、ヨッフムはこの曲の終楽章では冒頭で設定した速めのテンポを最後まで貫き通している。(6番と同じやり方を採るなら7分20秒から遅い別テンポになるはず。)それゆえ変に分別くさい演奏になっていないという見方もできる。名盤の誉れ高い6番よりも(若々しさを晩年まで保ち続けた)ヨッフムらしさという点では上回っているといえるだろう。

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