交響曲第6番イ長調
エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団
89/09
Teldec 0927-41400-2

 インバルはこの6番に約59分をかけている。この演奏時間自体、かなり長めの部類に入ると思うが、(さほど興味が湧かなかったのか)5番を70分そこそこで振ってしまった彼が、どういう訳かこの曲ではネットリなのである。第1楽章は腰を落とすところはちゃんと落とし、思い入れタップリに演奏しているし、エンディングもしっかりタメを作っている。第2楽章は17分台でやや遅め。ただし粘らない。ここを淡々と進めるのは明るい音色とマッチしていると思う。スケルツォ主部は快速だがトリオはネットリ。終楽章も冒頭こそ快速だが、曲想が静かになってからはやはり腰を落ち着けてしみじみ演奏するなど、テンポの変更を何度も行っている。こればっかりだが、地味な曲にはこれぐらいのケレンが欲しい。
 当サイト作成のため改めて聴いたが、つくづくいい演奏であると思った。私は輸入盤のULTIMAシリーズ2枚組を買ったが、国内盤が現役で充実した解説があるなら、これを「ファースト・チョイス」にすることに全く躊躇はない。彼は6番や初期交響曲のように規模の小さい曲に共感を示すのであろうか? 何にせよ、この曲からようやく彼の本領が発揮されてきた感じである。
 当ページがインバルのディスク評では最後になるので締めくくりとして述べるが、彼は改めてブルックナーを録音すべきではないかと思う。348番は「まっとうな」版を使って。そして、可能な限り優秀なオケを振って。当盤を聴くと「せっかく実力があるのに勿体ない」と思えて仕方がない。もっとも、彼が今もブルックナーにさほど共感を抱いていないのであればどうしようもないが・・・・・

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