交響曲第7番ホ長調
マルク・ゴレンシュタイン指揮ロシア国立アカデミー交響楽団
04/04/09
Melodiya MEL CD 10 00850
最初に発売情報を見た時はタイプミス(誰かがHをGと打ち間違えた)、つまりホーレンシュタインの演奏だと思い込んでいた。そういう名前のロシア人指揮者が本当にいるとは全く知らなかったのである。ちなみにネット通販各社は「ゴレンシテイン」という表記を採用し、それに追随しているサイトも見かける。ただ私は(ロシア語サッパリの自分が言うのも何だが)語呂があまりにもよろしくないので使いたくない。もっとも「ゴレンシュタイン」にしても反射的に囲碁の布石みたいな「五連石」を連想してしまうから(俺だけか?)五十歩百歩かもしれない。(実際に使われているのは「二連星」とか「三連星」なので、"stein" ではなく "stern" だとは解っちゃいるんだが・・・・)当盤はネット上掲載の演奏時間から第1楽章に比して第2楽章がノロすぎるように思われたが、ある試聴サイトで結構高く評価されていたため気にはなっていた。ヤフオクで1敗を喫した数ヶ月後、「塔」で特価品(税抜¥1,512)に指定されていたので注文に踏み切った。結果的に少し安く付いた。
ΜΕΛΟΔИЯ(←文字化け御免)レーベルのブルックナーCDを入手したのはロジェストヴェンスキーの数種以来実に久しぶりだ。(どうでもいい話だが、ギリシャ文字が2つほど混じっているように見えるのは気のせいだろうか?)そして、ブックレットでロシア語を目にするのは当盤がたぶん初めてである。それゆえ更新記録ページにもついつい悪戯書きしてみたくなったという次第である。(私が持っているムラヴィンスキーの演奏は全てBMGの国内盤だし、YEDANGやREVELATIONがリリースしたロジェヴェン盤にしてもラテン文字オンリーだった。→追記:その後入手したСВЕТЛАНОВの「МЕЛОДИЯ」は大部分がキリル文字による表記となっている。)なおiTuneでの再生に際してトラック名を取得しようとしたが果たせなかった。(海賊盤の類でも時に表示されるというのに。)まだデータベースには登録されていないらしい。
さて、立ち上がりをしばらく聴いて「ウソやろ」と思った。20分45秒というトラックタイムからは考えられないほどの(チェリ&MPO並みに少なくとも24分台にはなりそうな)スローテンポだったからである。ところが2分57秒から相応のテンポになる。まさか冒頭部を序奏と位置づけていたわけではないだろう。(この曲はブルックナー開始直後から第1主題提示に入り、序奏など存在しないことはもちろん承知している。)さらに5分過ぎからはレーグナーばりの快速モードに突入。そして7分台中頃から再度ノロノロ。何が何だか訳が解らないが、曲想に合ったテンポをその都度設定しているという意味では非常に「わかりやすい」スタイルといえる。何にしてもブルックナー演奏の本場からは離れた国の指揮者&オケゆえ、伝統に縛られることなく独自のアプローチを試みることも可能だったのだろう。とはいってもウケ狙いの尻軽加速などはしていないから、ムラヴィン盤同様の異色演奏として楽しむことは十分可能だ。(ただしロシアの楽団の特徴とされる圧倒的な馬力や切り裂き魔を思わせるラッパの音色といったものは聴かれなかった。ネット上のどこかで指摘されていたように、同国のオケは次第にローカル的な魅力を失いつつあるのかもしれない。)この楽章のコーダも相当に遅いが、出だしと対応していると考えれば辻褄は合っている。
アダージョは逆にトラックタイムから予想されるより速めのテンポで開始されるが、しみじみ部分の濃厚な味付けによって相殺(?)され、結局25分19秒の演奏となった。つまり、ここでもテンポの変更が少なからず聴かれる訳だが、決して思い付き的な「テンポ揺らし」「テンポいじり」の類ではないから不快とは感じなかった。それも精密なアンサンブルあってこそであることも忘れてはならない。私としては比較的真っ当な解釈による後半2楽章の方が上出来だと思った。楽器間のバランスが良く取れており、非常に充実した美しい響きが堪能できる。(ちなみに録音も超優秀である。)ロシア的な何かを求めて当盤を手にした方には正統的すぎて物足りないかもしれないが・・・・
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