交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
ミヒャエル・ギーレン指揮南西ドイツ放送交響楽団
99/05/03〜05
haenssler CD 93.031

 最初の数秒を聴くだけで異様なまでに響きが明晰であると判る。かなり神経質な立ち上がりに嫌な予感がしたが、最初の盛り上がりに至るまでを変に煽ったりしない。これなら(ギーレンの演奏の特徴としてよく言われるように)即物的演奏であると理解して落ち着いて聴くことができる。第1楽章9分38秒のピークは端正そのものである。が全曲を高速テンポ(トータル55分半は2稿としてはかなり速い)で押し通した演奏としては筋が通っている。アッサリしたこの楽章の締めも同様。第2楽章3分30秒から早足になるのは他盤にも例があるが、速めの基本テンポで始めているから尻軽感や空中浮遊感(要は私の不快感)は全くない。第3楽章も切れ味抜群のスケルツォ主部、甘さ控えめのトリオともに全く隙がない。コーダもこれくらい引き締まっていれば「贅肉」「盲腸」のようには絶対に思わない。が、何よりも感心したのは終楽章の冒頭である。弦による8秒間の合奏以降、0分24秒でティンパニが「ドン」と鳴るまでのフル・オーケストラ部分の見事さに脱帽してしまった。透明感抜群の響きのお陰で、音量はさほどでもないのにスケール感は比類がない。巧さではヴァント&NDR盤の第1楽章ピーク処理とも五分に渡り合っている。彼ら以外にもチェリビダッケ、ザンデルリンク、マタチッチなど3番を聴いて真に実力を認めるようになった指揮者は少なくない。あくまで私個人にとってだが、「ブルックナー指揮者」か否かの試金石として最も相応しい曲なのかもしれない。(そうなると、この曲を録音していない、もしくは未だ私が入手していない指揮者は困ったことになるのだが・・・・)

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