交響曲第8番ハ短調
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
49/03/14
CENTURION CLASSICS IECC10018(全集)

 フルトヴェングラー&BPOによる「1949年3月14日盤」とされるブル8録音には、真正の14日演奏を収めたTESTAMENT盤(98年に発売)と14&15日のハイブリッド編集によるEMI盤(それ以前から出回っていた)の2種があるらしい。が、当盤がどちらのコピーなのかは不明だし別に興味もない。
 さて、当盤のトータルタイム(78分51秒)は翌日に収録されたArchipel盤のそれ(76分02秒)とは3分近くも違う。必然的にテンポも相当違っていると聞こえる。だが「さすがはフルヴェン、たった一日の違いで・・・・」と騙されてはいけない。ひとえにピッチの違いが原因である。(私の標準ピッチよりも当盤はやや低く、Archipel盤はやや高い。ともに修正したくなるほど不快には感じないが・・・・)両盤を聴き比べたけれども解釈に有意な差異を認めることはできなかった。(ちなみに「運命」の1947年5月25日盤と27日盤も同様であり、私的には「そんな大袈裟に言うほど違うかあ?」である。(どっちも異様にテンションの高い演奏として評価してはいるけれど。)それゆえ「英雄」の52年12月7日盤と8日盤の間に大きな差異が存在するという話も眉唾ものではないかと思えて仕方がなく、未入手の前者を聴いてみたいという気はサッパリ起こらない。そもそもネットオークションでも高騰必至の稀少品なのだが・・・・何で復刻盤ちっとも出んのやろ?)
 結局のところ、これら2種のブル8も私にとっては好き放題に暴れ回っている、もっと言えば「あのKという男」の人気を妬み怒り狂っている指揮者の姿が目に浮かぶだけの演奏に過ぎない。(ちなみに49年といえばフルトヴェングラーが久しぶりにワルターと再会した際、積もる話をそっちのけにしてカラヤンについて質問責めにしたというエピソードを残した年でもある。ま、嫉妬心やら猜疑心やらも桁外れに強い指揮者だったからこそ、あのような人間臭い ─別に「きれいごとではない」でも「切れば血の出るような」でもいいが─ ベートーヴェン演奏が成し遂げられたということだろう。)その点で面白いといえば面白いが、ピッチの高さも手伝って壮絶感の上回る15日盤の方が断然聴き応えがあるように思う。ということで当盤には特に存在意義(所有価値)を感じなかった。「豚に真珠」と言いたきゃ言え!

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