交響曲第7番ホ長調
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
51/04/23
Deutsche Grammophon 445 418-2

 当盤はフランスDGによる7&9番2枚組の1枚目である。カイロの放送局における聴衆入りのライブ録音らしい。あるクラシック総合サイトには「エジプトにフルトヴェングラーのブルックナーを聴けるような聴衆がいたのだろうか。不思議でしょうがない。」とあるが同感である。フルトヴェングラーには南米(ブエノスアイレスやカラカス)での演奏会の音源も存在するようだが、このように第三世界(開発途上国)での録音が残され、リリースされているのは他には(やはり録音嫌いの)クライバーぐらいではないだろうか?(私が知らないだけか?)
 ヨッフムやマタチッチと同じく、5番や8番の暴れっぷり(壊れっぷり)からすると拍子抜けするくらい「まとも」な演奏に聴こえる。(改訂版使用だが、7番ではノヴァーク版との違い=改竄部分が気になるのはフライング・ホルンだけである。)とはいえ、第1楽章4分13秒でハ長調になってからの加速はかなりあざとい。この悪しき伝統はベームなどに引き継がれるのだが、フルヴェンは転調前の4分37秒で突如減速してしまう。これも指揮者の個性なのだろうが、私は脱力するだけで全く意図が解らない。7分13秒からの短調部分はかなりテンポを落としており、第2楽章の一部が紛れ込んだのではないかと錯覚してしまうほどだ。なお、この楽章のコーダではテープ損傷が著しかったようで音揺れと音量レベルの変動が激しく、非常に聞きづらい。それを除いても当盤の音質は決して良いとはいえない。
 アダージョもハ長調部分で速くするなど、いつものフルヴェン節である。おそらくは「エロイカ」の第2楽章をモデルとしたのだろう。10分01秒でトランペットが調子っぱずれの音を出している。その前から気になっていたが、当盤のアンサンブルはBPOにしては随分と粗い。熱帯の風土病を恐れて正規のメンバーが遠征参加を渋ったので、現地で多数のエキストラを採用したのだろうか?(まさか)
 劇的な12楽章とは対照的に34楽章は比較的アッサリと流しているが、これも「エロイカ」でのやり方をそのまま導入したためと思われる。決勝トーナメント進出のため何が何でも勝ち点3を得ようと懸命にプレーしていたけれども、ハーフタイム中に監督から引き分けでもOKと知らされたチームの戦いぶりを見ているようだ。

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