交響曲第6番イ長調(第2〜4楽章のみ)
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
43/11/13〜16
Music & Arts CD-805

 目次ページに書いたように「首なし痛すぎ」のため買う気は全くなかったのだが、偶然入手してしまうこととなった。ブラ1の45年1月23日の演奏(BPOとの戦時中最後の演奏会の録音で4楽章のみ残存)が素晴らしいというネット評を読んだため、どうしても聴いてみたくなった。そこでディスクを捜してみたところ、amazon.comのマーケットプレイスで新品が6ドルちょっとで売っているのを発見。梱包手数料&送料を加算しても12ドル以下で手に入るので即注文した。届いたディスクのケース裏を見てビックリ。何とブル6番が併録されているではないか! つまりブラ1購入の結果、オマケとして付いてきたという訳である。
 しかしながら、「オマケ」どころか演奏自体はなかなかに素晴らしい。本来地味なアダージョを例の「フルヴェン様式」で劇的に盛り上げている。4分50秒〜や11分25秒〜の旋律にここまで寂しげな表情を付けている演奏はなかなかないし、13分40秒以降はそれまでのテンポを完全に無視して自己陶酔している。スケルツォも激しく燃え上がっているが、貧弱な音質ゆえ迫力が十分伝わってこないのが惜しまれる。終楽章は比較的まともに始まると思わせて、1分24秒から泥んこティンパニにより狂乱の場と化す。以後も多少の乱れなどもろともせず、駆けるところは全力でまっしぐらに駆け抜ける。そして、疲れ果ててバッタリ倒れたかのように突如テンポを落とす。これの繰り返し。おそらく第1楽章もこんな演奏だったに違いない。最後に炸裂する金管の凄まじさは他に例を見つけるのが難しいほどだが、あるいは別働隊も雇っていたのか? 5番では「ちょっとやりすぎと違うん?」と言いたくなったが、こういうハチャメチャスタイルもこの曲なら大歓迎である。これが優秀録音だったらどんな修羅場が再生されていただろう。想像するとちょっと怖い。
 なお、主目的のブラ1終楽章だが、実はかなり前にNHK-FMで聴いたことがある。その時は演奏そのものよりも解説の方に感動したと記憶している。(捜してみたら、ある優良クラシック総合サイトにその話がそっくりそのまま載っていた。件の番組ではそれを記した本を朗読したのだろう。)改めて聴いてみると、確かにフルヴェンのブラ1としては(断片ゆえの参考記録扱いだが)これまで愛聴してきた51年盤や53年盤と肩を並べるほどの名演だと思う。しかし、この曲に限らないけれども、彼のディスクは録音やマスタリングの条件がまちまちであるため音質に極端な違いが生じており、とかく再生装置を選ぶ。よって、どれをベストとするかも簡単には決められないのである。

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