交響曲第5番変ロ長調
クルト・アイヒホルン指揮バイエルン放送交響楽団
90/10/04〜05
CAPRICCIO 08-10 609

 「聖フロリアンのライヴ」といえば思わず嫌な記憶が頭を過ぎるが、それをすっかり忘れさせてくれるほどの見事な出来映えである。(「オットーボイレン・ライヴ」は新旧ともに名盤なのだが・・・・)やはりバイエルン放送響は上手い。同オケの5番をどうしても聴きたくて海外通販から邦貨で3000円近く出して購入したのだが正解だった。(と、思っていたのだが、つい最近「塔」通販のリクエストに応じて再プレスされた品が発売されることとなり、結果的に1000円以上損した。)メタリックで明るい音色が程よい残響とマッチしており、耳にとても快い。(立ち上がりが少々鈍いと感じられるところがあるが、それも残響に起因するようである。)とはいえ、要所要所でティンパニが重石の役割をしっかりと務めているから響きは決して軽々しくならない。70分そこそこで終わるのならともかく、80分近くかけるのであればこの位の重量感が必要だということ(すなわち響きとテンポの関係)を指揮者 and/or 録音技術者がちゃんと解っている証拠である。7番ページでも少し触れたが、この指揮者の動的なスタイルは5番にこそ向いていると思う。(8番はもう一つだということだが、やはりオケの技量不足のせいか。)まさに伸縮自在、それでいてアンサンブルは全く乱れない。あら探ししても欠点が聞き出せないので、この先に何を続けたら良いのか困ってしまうほどである。
 某掲示板のブル5スレでの評価は非常に高い。「神々しさ」「敬虔さ」という単語まで使われて絶賛されていたが同感である。(ただし、後者では93年盤の方がやや上回るように思う。)始終圧倒されっぱなしだった筆者は、終楽章コーダ24分15〜16秒の絶妙な呼吸(ほんの一瞬だけ溜める)に遂にノックアウトされた。25分42秒でトランペットが少し出遅れる。ようやく見つけたとばかり立ち上がったのも束の間、堂々とした歩みの締め括りにまたしても打ちのめされてしまった。(遅くはするが、非常識なノロノロテンポにしないのはいうまでもない。)
 あまりの素晴らしさゆえ、いきなり上位ランキングへ殴り込みをかけることになったのも当然だが、ヴァントの青裏(エジンバラ・ライヴ)を入手していなかったら(息苦しさも時に感じてしまうBPO正規盤を抜いて)初登場で1位に躍り出ていたところだ。ここで録音年月日が全集録音第1弾となった7番の半年後であることに気が付いた。カメラータ・トウキョウの関係者には悪いが、このプロジェクトを企画すべきはCAPRICCIOではなかったか、と思ってしまった。(あるいは先行者に遠慮したのだろうか?)高水準の演奏が(ケーゲルのベト全他収録8枚組ボックスのように)後に激安箱として売られていたかもしれないと考えると実に惜しい。(←結局自分の都合だけやんか。)

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